数あるトーク番組の中で「アメトーーク」が面白い理由は、他のトーク番組がつまらないからである。


高橋維新[弁護士]

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「アメトーーク」(テレビ朝日)は、言うまでもなく「トーク番組」である。

最近のトーク番組で視聴者が目にする番組の多くは、主に2種類の映像によって構成されている。「VTR」と「スタジオ部分」だ。「アメトーーク」も例に漏れず、トーク番組ではあるが、企画によってはVTRも多用される。「運動神経悪い芸人」や「芸人体当たりシミュレーション」などの企画がそうである。

だから「アメトーーク」は、純粋なトーク番組というよりは、「スタジオ部分」におけるトークの比重が高めの、総合的なバラエティ番組と捉えた方がしっくりとくる。そして、「VTR」の比重が高めの企画では、スタジオでのトークはあまり重要ではなくなる。「アメトーーク」においても、そういう企画のときは、トーク番組ではなく「めちゃ×2イケてるッ!」や「ガキの使いやあらへんで!!」のようなバラエティと同じ位置付けで論じた方が分かりやすくなるだろう。

他方、「アメトーーク」には、スタジオでのトークがメインの企画もあり、もちろん、そちらも人気を博している。世にあるトーク番組は枚挙に暇がない。そんな中で、「アメトーーク」の人気は目を引くものがある。

トーク番組のタイプにも色々なものがあるが、出演者の人数で分類すると、「徹子の部屋」(テレビ朝日)、「おしゃれイズム」(日本テレビ)、「A-studio」(TBS)に代表されるような「ゲスト一人のトーク番組」と、「アメトーーク」、「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ)、「ダウンタウンDX」(日本テレビ)のように「ゲストが大勢いる」形式のトーク番組とに分けられる。

近年は、ゲストが大勢いるトーク番組が乱立しているが、その中でも「アメトーーク」のみが際立っているのははなぜなのだろうか?

筆者が考える限り、「アメトーーク」と他との違いはたった一つである。それは、ゲストが芸人で固められているか、そうでないか、の違いである。「アメトーーク」をこれまで何本も見てきたが、今のところそれ以外に違いが見つけられない。

では、なぜ「たったそれだけ」のことで、このようにウケる番組になるのか。これは「アメトーーク」がおもしろいから、というよりは、他のトーク番組がおもしろくないからである。こう考えた方がしっくりとくる。

「さんま御殿」や「ダウンタウンDX」には、芸人でないゲストが出てくる。(芸人でない)タレントであったり、スポーツ選手であったり、その他、文化人などである。彼らは、芸人ではないので、「おもしろい話のプロ」ではない。スポーツ選手に至っては、話のプロですらない。無論、彼らの一部にはおもしろい話ができる人もいるが、それはほんの一部でしかない。

芸人は、さすがに芸人であるから、プロとして、本番前におもしろい話やおもしろい返しを色々と考えて、準備してきている。ところが芸人でないタレントには、そういう覚悟が足りない人の方が多い。何かの宣伝の告知のためだけにトーク番組に出張ってきたとしか見えないゲストさえいる。

女優やアイドルは事務所の差し金で芸人のように鋭くイジることもできない。おもしろい話ができないことをイジってやればまだ笑いを引き起こす余地もあるが、芸人でないからそれもやりにくい。彼らのおもしろい話を引き出すためにMCが色々と取材や下調べをすることも考えられるが、ゲストが多人数だとそこまで手が回らない。

「A-Studio」の司会の鶴瓶は、ゲストの取材を自ら色々とやっているが、あれはゲストが一人だからできることなのである。また「さんま御殿」の明石家さんまは、元々交友関係が広いので、事前に付け焼刃的な下調べをしなくてもある程度対応できており、多人数トーク番組の司会の中では一人気を張っている印象がある。

昔は、有名人が喋るというだけで多少の需要があったのかもしれないが、今はそうではないのである。有名人のおもしろい話はネットでいくらでも拾える(それもネット上で拾える話にはテレビでは到底扱えないレベルの「低俗さ」に満ち満ちている)ので、出る方も、自分でどうすればおもしろくなるかを考えていく必要があるのである。

スポーツ選手に至っては話すプロではないので更に悲惨である。もちろん、スポーツ選手の中にも、中山ゴンだとか、イチローだとか、話がおもしろい人や何かに一家言持っている人はいるが、それ以外の大部分(例えば本田圭祐、香川真司、錦織圭、福原愛、内村航平など)は話がおもしろくないし、聞いても当たり前のことしか答えない。

他方で「アメトーーク」は、ゲストが全員芸人なので、おもしろい話をすることに出演者全体が腐心している。スベったらスベったで、そのことをツッコめば笑いに変えられる(代表的なのが出川哲朗や狩野英孝である)。変な人には「変だよ」と言えるから妙な空気が放置されることもない。

アンタッチャブル・山崎、有吉弘行、フットボールアワー・後藤、FUJIWARA・藤本、中川家・礼二といった名手達により、即興で有機的な絡みが重畳的に生じていく。おもしろさを重視してキャスティングをしており、告知ゲストがいても司会の横での観客に徹している。

唯一弱点があるとすれば、みな芸人なので話を盛り過ぎることである。おもしろい自分を出そうとしすぎて、ウソっぽくなってしまうのである。

例えば直近の2015年1月29日に放送された「iPhone使いこなせていない芸人」は、「自分たちはiPhoneのことがこんなに分かっていません。どうぞバカにしてください」という企画であり、ゲストの芸人たちがiPhoneという先進的な機械に振り回される様子が放映されていた。でも、本来頭のいいはずの彼らがあそこまで飲み込みが悪いはずはないと感じてしまったため、少しわざとらしさが鼻についた。

もちろん、アイドルが変人キャラや不思議ちゃんを演じる場合よりは巧いのであるが、芸人でもどうしても鼻につくことがあるのだ。これは、「運動神経悪い芸人」という企画でも、たまにわざとやっているんじゃないかと感じることがあるのと共通している。

この必死さからくる「わざとらしさ」を強調したパロディ企画というのは、作れると思う。こういうのは「めちゃイケ」が得意だが、本家「アメトーーク」で「アメトーークに出たくて話を盛り過ぎる芸人」などの企画を真っ先にやってしまえば、この番組が本物であることが証明されることになるだろう。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。