フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「細かすぎて伝わらないモノマネ」はもう見限る潮時


高橋維新[弁護士]

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4月2日のフジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」は「男気ジャンケン」と「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」の2本立てであった。

「男気ジャンケン」については、何回もやっていることからすると人気のある企画なのかもしれないが、筆者にはおもしろさがさっぱり分からない。

ゲストをたくさん集めて、番組が設定したコンセプトに従ってロケを進めていくタイプの企画なのだが、基本的にはタレントたちのロケの模様をそのまんま撮って垂れ流しているだけなので、笑いの密度も完成度も低い。ゲストもたくさんいすぎである。

人がたくさんいる結果、あまりしゃべれない人や扱いの良くない人も出てくるので、コンセプトがぼやける。

「金をたくさん使ってたくさん人を集めてバカ騒ぎをする」

という一昔前のフジテレビのバラエティの悪いところが全部出ている。1回に出る人は、多くて5、6人までが限界だろう。

「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は、今回でもう21回目である。この企画は、企画名から一目瞭然であるが、当初は「伝わらないモノマネ」を披露してもらうというスベリ芸の企画であった。

スベリ芸は、スベっているのになぜおもしろいのか。簡単である。笑いの元になる「ズレ」があるからである。

笑いはズレから生まれるというのはこれまで何度も述べているところである。男なのにクネクネ歩いている、白人の顔なのに英語がしゃべれない、デブのくせに少食だ、そういうようなズレが笑いを生む。スベリ芸にあるズレは、「笑いを提供する場なのにできていない」というズレである。

「スベリ芸などという芸はない。本気で笑いをとろうとしているのにスベったからこそ初めておもしろくなるのだ」

という人がいるが、狙ってスベりそうなことをやっている芸人は確実にいる。ただ、それをやると「ウケ狙い」でわざとスベっているのではないかと受け手に思われて、(スベリ芸としての)笑いが生じにくくなるのは確かなので、この指摘も全く意味がないというわけではない。

スベリ芸の弱点は、ズレの種類が通常の笑いと違うので、受け手にズレを認識させにくいところである。普通におもしろいことがやられている中で突如ズレとしては種類の違う「スベリ」が提供されると、観客が面喰ってしまう。

だから、その点をきちんと「スベってますよ」「二度とやるなよ」などとツッコんで、観客に何がどうおかしいかを説明してやる必要がある。偶発的に生じたスベリに適切なツッコミが為されれば、そのツッコミは「フォロー」とか「助け舟」などという名前を付けられてありがたがられるのである。

「笑点」(日本テレビ)では、スベった場合は座布団を取り上げることでツッコミとしている。「あらびき団」(2007〜2011・TBS)では、スベった芸についてはVTRをブツッと切って、その後、東野幸治と藤井隆が辛辣なコメントを残してツッコミとしていた(だから、あらびき団は東野と藤井のコメントまで見て初めて作品として完成する映像を提供していたということである)。

「細かすぎて」の場合、「舞台下に落とす」という作業がこのツッコミの役割をしている。「伝わらない」モノマネをやってスベってしまった演者を闇に葬り去ることで、「おまえのモノマネは分からない」という言外のツッコミをしている。だから、笑いのコンセプトは非常に明確で完成されているのである。

ところが回を重ねるにつれ、それだけで普通におもしろいモノマネがどんどん増えていった。結果、落下にもあまり意味がなくなった。

今は、ただのおもしろいショートモノマネの品評会になっている。それはそれでいいのだが、回を重ねすぎたせいで見る方のハードルもどんどんと上がっている。そろそろ、このコンセプトも見限る潮時だろう。

今回も、本当におもしろかったモノマネは1、2個である。まあ、優勝作品は流石のクオリティではあったが。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。