<弁護士が気がついた>5月9日「めちゃイケ」は「賭博罪」と「遺失物等横領罪」に該当する?


高橋維新[弁護士]

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2015年5月9日のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ! 」(以下、めちゃイケ)は、2時間スペシャルであった。以下に、感じたところを記す。

中身は、「オカネ屋」と「持ってけ100万円」という企画の2本立てである。長時間スペシャルを複数の企画で構成する場合、企画間のつながりがない、あるいは希薄なままぶつ切りで編集される例も多い(特に「アメトーーク」のスペシャルなどはこの「ぶつ切り」感が分かりやすい)ところだが、「めちゃイケ」はきちんと企画間の移り変わりの際には関連性を持たせて全体的に統一性を持った編集をしてくる。

今回も、導入の「オカネ屋」で矢部に「(お金は)必要であればいくらでも使いますよ」という発言をさせてから、「持ってけ100万円」につなげていた。その後も「オカネ屋」と「持ってけ100万円」は互いに絡められながら代わる代わる画面に出てきていたので、視聴者としてはチャンネルを変えにくかった。

これは、数字をとるための工夫としては素直に褒められるところである。「アメトーーク」のように企画ごとにぶつ切りの編集をすると、目当ての企画だけ見て、あとは見ないということが可能になってしまう。これでは、(特に「アメトーーク」のようにテーマごとにおもしろさの差異が激しいと)視聴率も安定せず、広告主への売り込みがしにくくなる。

とはいえ、これは視聴率を下げないための小手先のテクニックの話でしかないので、こういう編集をしたからといって必ずしもおもしろさの向上に直結するわけでもない。そこのところは忘れてはいけない。

企画ごとの各論に移る。

「持ってけ100万円」は、矢部が自分の現金を街中に放置し、一定時間拾われなければ倍になるが、拾われれば拾った人のものになってしまうというゲーム企画である。今回は坂上忍も参戦し、2人の対決という形でゲームが行われた。

こういう企画の常として、どこまでがガチなのかははっきりとしたことは分からない。街中に置くお金は矢部が用意しているものではなくて番組が用意しているものかもしれない。拾う人も本当の通行人じゃなくて番組が用意した人かもしれない。

ただ、めちゃイケという番組の一コーナーであること、芝居が巧いわけではない矢部が本気のように(見える)リアクションをしていることからすれば、ガチの可能性はある程度あるのではないかと思う。

ガチであれば、ヤラセという問題は消えるが、別の問題が出てくる。このゲーム企画には、2つの犯罪の陰が見え隠れしているのである。

まずこのゲーム自体、拾うか拾われるかというギャンブルであるため、賭博罪に当たる可能性がある。筆者も一応弁護士なので、刑法の条文を引いておこう。

【刑法】

(賭博)

第百八十五条  賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

(常習賭博及び賭博場開張等図利)

第百八十六条  常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。

2  賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

見ての通り、賭博はすべからく犯罪というのがこの国の法律の建前である。「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合に例外的に犯罪でなくなるに過ぎない。

家族でチョコレートを賭けて麻雀をする場合などはこの例外に当たると考えるのが常識的なところであろうが、「持ってけ100万円」については、賭けている額が大きいのでなかなかこの例外に当たると言いづらい。言い訳をするとすれば、それこそ「ヤラセです」というかっこ悪いことを言うしかなくなるのである。

それもこの企画は今回で9回目ということなので、より重い常習賭博に当たる可能性すら出てくる。

もう一つ。

拾った物を自分の物にする。これは、完全に遺失物等横領罪に当たる。

【刑法】

(遺失物等横領)

第二百五十四条  遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

一応矢部も坂上も拾われたら拾った人の物になるということを同意したうえでゲームに臨んでいるので、厳密に言うと落ちている現金は遺失物ではないと思われるが、拾う者にはそのような事情は分からないので、「遺失物等横領」が抵抗なくできる者が得をする仕組みになっている。

つまり、このゲームが「遺失物等横領」を助長していると言われても文句は言えないのである。

すなわち、この企画は、こういう犯罪まがいのことを放映しているかなりとんがった企画なのである。「めちゃイケ」らしいといえば「めちゃイケ」らしいので、こういうチャレンジ精神自体は評価するが、危険性に見合うほどおもしろさがあるかといえばそうとも言えないと思う。

却って、危険すぎて視聴者を引かせてしまう力が働いている。筆者は、拾う人が出たときなどはネコババをする犯罪者を目撃しているようで背筋が薄ら寒く、心から笑えない。このようなチャレンジをするなら、もっとおもしろくなる方向でやってほしい。

一応めちゃイケもこの点に配慮はしている。

まず賭博については、坂上には損失を補填し、矢部からはもうけを取り返すというシーンを番組の最後の最後に放映することで、「賭博ではないですよ」ということを強調していた。このようなフォローは、過去の「持ってけ100万円」ではなかったように記憶している。

この「フォロー」も例えば漫然と「※もうけはあとで取り返しました」というテロップを入れるだけでなく、コント仕立てになっていたので、何をやるにもおもしろさを最優先する「めちゃイケ」の矜持を見た気がした。

遺失物等横領については、拾った人にすぐさま演者とカメラが近づき、拾われた矢部や坂上が「あげる」ことを正式に了承することで、「遺失物等横領である感」を薄めていた、このようなシーンも、過去の「持ってけ100万円」にはなかったような気がする。

こういったフォローが入るのも、テレビに対する風当たりが厳しいご時世を反映してのものだろう。

他方「オカネ屋」は、いつもの通りだったので、特に言うことはない。

全体的には、番宣が多過ぎである。バイキングに、AKBの総選挙に、バレーボールに、27時間テレビ。番宣が入ってもただ漫然と告知をさせるのではなく、おもしろく仕立てあげるのが「めちゃイケ」という番組なのだが、局からこれだけ横槍を入れられたのでは自ずと限界があるというものだろう。

「めちゃイケ」自体、番宣を入れないと2時間スペシャルを放映できないほど地位が下がってきているのかもしれないが、そうだとしても、めちゃイケを立ち直らせるためにもっと自由な番組作りを容認した方がいい。

「めちゃイケ」を今も見ているのは真剣にお笑いが好きな人間が大半だと思われるので、「めちゃイケ」でこういった番組を宣伝したところでどのような効果があるかは疑わしい。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。