<もう面白くない「めちゃイケ」企画>「ガリタ食堂」は陳腐なバラエティに成り下がった


高橋維新[弁護士]

***

5月16日放送のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」である。今回の企画「ガリザップ」であるが、要は「ガリタ食堂」の延長である。

「ガリタ食堂」におけるボケの主役は、ガリタである。ガリタが、牛や馬のように食べ物を呑み込んでいく様をおもしろがりながら見るのが「ガリタ食堂」である。

一応、ここに「矢部浩之を太らせる」という設定がくっついてくるが、これはオチ用のものでしかない。番組の要求をこなして矢部が実際に太れば、「目標達成! やった!」というオチでシメられるし、矢部が音を上げれば「全然太ってへんやん! 何やっとんねん!」という形でオトせる。どっちに転んでもどうにかなるのである。

いずれにせよ、矢部を太らせるという目標設定は最後をきちんとシメるためのものでしかなく、それ以外の部分で楽しむべきはガリタの牛飲馬食の模様なのである。

もしかしたら、矢部にひたすら物を食わせるという「辛いこと」をさせて苦しむ様を楽しむというリアクション芸的な狙いがあったのかもしれない。しかし、一般のリアクション芸と比較すれば、物をたくさん食って苦しむ様子は非常に地味であって、リアクションもとりにくい。

矢部も、基本的にはツッコミしかできない芸人なので、苦しくてもリアクション芸を一切しない。岡村や宮迫が矢部の役目をやっていたら、白目を剥いたり頬を振るわせたりといった顔芸や、体全体を使ったリアクションを織り交ぜてきただろう。

渡辺直美がゲスト出演した時は、おもしろい動きや表情で苦しさを表現していた。また千原ジュニアが出てきた回では、きちんとジュニアの話芸で苦しさが表現されていた。

矢部には、こういうボケができないのである。苦しみの内容が地味で演者もリアクションをやらないとなれば、それが当初からの狙いだったとは考えにくい。

やっぱり、一番見るべきはガリタの食いっぷりなのである。そして、こんなものは1回見れば飽きる。

その後もなぜか回数を重ねたガリタ食堂は、出演ゲストの告知とお店の紹介に終始する陳腐なバラエティに成り下がっていった。告知に来るゲストはキレイどころの役者がメインなので、苦しみを与えても矢部と同じようにリアクション芸をしない。

そもそも、きちんと番組が用意した苦しみを受け止めようとしない。ちゃんと物を食べないのである。本当に、シンプルに告知に来ただけであった。

画面上では、告知がされ、店の料理がウマいと褒められる。ここには、笑いはない。何かを褒めても基本的には笑いは発生しないのである。(ちなみに最近「とんねるずのみなさんのおかげでした」で多用されている食いもの屋でのロケ企画にも同じことが言える)

他方でボケ役を担っているであろうガリタはひたすら物を喰う。しかし、もう視聴者は見飽きている。矢部はよく分からないままヒイヒイ言っている。岡村は、色々動き回ってはいるが手持ち無沙汰感が否めない。つまり、何もおもしろくないのである。

今回も、「ガリザップ」という形でアクセントを加え、スピードワゴン小沢を使ったコントなども盛り込まれていたが、基本的にはこれまでのガリタ食堂の問題点が全部出ていた。

ガリタはひたすら喰うが、それだけである。矢部もひたすら苦しそうにしているが、それ以上のことを一切しない。ついて来ている岡村もどうすればおもしろくなるのかが見えないので窮屈そうである。

唯一違ったのは、告知ゲストの綾野剛が、これまでのゲストと違い真面目にデブエットに挑んだ点である。綾野は、ガリタと同じ物を全部食べた。この真面目さは単なる告知と油断してダラけたまま画面に出てくる他の役者にも見習ってほしいが、何一つ笑いの点では向上につながっていなかったことが惜しい。

綾野はどうすれば良かったか。ひとつは前述のようなリアクション芸をするという方法だが、男前でフラがないので岡村や渡辺直美のようなおもしろさは出ない。視聴者を引かせてしまう危険性すらある。

だったら、「綾野剛はすごい」という形で番組をシメるよりない。今回の失敗は、そもそも目標を+10kgという無茶な数値にしていたことである。ガリタ並みに食べたところで1日で10kg増やすのはほとんど不可能なので(質量保存則からすると、10kg体重を増やすには10kg分の何かを食べる必要がある)、スタッフも、

「どうせ綾野剛もこれまでの告知ゲストみたいに真面目にはやらないから、『いや全然太ってないやん!』というオチでしめようか」

という目論見でいたのだろう。

ところが綾野がクソ真面目にガリザップに挑んでしまったため、そのくせ10kgという目標を結局は達成できていなかったことで全体がスベった感じになってしまった。

一応矢部は、最後にこの点をツッコめてはいた。ツッコミしかできない矢部がこのフォローすらできなかったら本当にただの木偶の坊になってしまうところだったので、最低限の仕事はしたということであるが、とにかく矢部のこのフォローだけでは挽回しようのないフリのミスである。

番組側としては、綾野が真面目にくることを見抜いたうえで、きちんと達成できる目標を設定すべきであった。そうすれば、「目標達成! すごい! やった!」で番組が終えられたはずである。

でもそれは「おもしろい!」ではないので、保険の逃げのオチでしかない。筆者の愛している「めちゃイケ」には、そういう逃げのオチをやってほしくはない。

それから、矢部は芸人からタレントという職業に転職しようとしているのだろうか。役者の綾野剛があれだけやっているのを、芸人矢部が、何も感じずに見ているのだとしたら、もはや芸人ではない。ただのタレントである。

結局、企画としてのガリタ食堂なんかもうやめた方がいいのである。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。現在、弁護士。ファミ通町内会長(第5代)。