<海上自衛隊トップ・元海将が解説>日本を除く国際社会は「集団安全保障措置」を中国も含め当然視している

政治経済

伊藤俊幸[元・海上自衛隊 海将]
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筆者はこれまで可決した安保法案の様々な論点について、わかりやすく説明してきました(https://mediagong.jp/?author=229)。
そこで今回は「集団安全保障措置等に素早く支援ができる」についてです。本稿では、

「国連を中心とした国際社会が決めた活動に『自衛隊を派遣して行う支援』が適時適切にできるようになる」

ということについて解説をしたいと思います。
「集団的自衛権の権利は保有するが行使はできない」との解釈により、たとえ「集団的自衛権」ではない「集団安全保障措置」であっても「集団」という言葉が付くだけで、これまで外交官や防衛駐在官は当初からの議論に入ることすらできませんでした。
筆者が現役の自衛官の頃、外国軍高官や外交官と機論すると必ず言われたのは、

「集団安全保障やPKO等、国連のマンデート(委任状)による活動を何故集団的自衛権で議論しているのか」

というものでした。
また米国防衛駐在官当時、海自艦艇が初めて「テロとの戦い」に参加するとして出港する様子がCNNで世界中に放映されたことがありました。筆者は当時の中国の駐在武官に「中国政府はまた反応するのかな?」と意地悪く質問したことがありました。
ところが相手からは、

「国連決議に基づくテロとの戦いに支援するための出港でしょ。当然のことじゃないか。」

との回答でした。 先の大戦で同じ敗戦国であるドイツは1994年にドイツ連邦憲法裁判所が「集団安全保障体制の枠組みにおける出動は合憲であること」と憲法解釈をして基本法の改正が行われました。つまり、日本を除く国際社会は、国連の集団安全保障措置という考え方を中国も含め当然視しているのです。
我が国では国連中心主義か同盟主義かとの、二元論でよく議論がされます。しかし、国連憲章が合法とする武力行使は、

  1. 第7章(武力制裁)
  2. 第8章(地域的取極・機関)
  3. 第7章51条(自衛権)

と定めているように、全て国連憲章の下で許可されている概念に他ならないのです。
我が国はこれまで時間をかけて特措法を作り、自衛隊が数か月後に参加すると「too late, too small(遅い上にそれだけか?)」といわれてきました。これが当初から参加できることで、主体的な議論が可能となり、復興支援や国連の制裁活動に、武力行使や武器使用をしなくても、小さくても日本に適合した支援の形態で参加できるようになるのです。
国際社会は皆がホットな時期に、小さくても後方支援だけでもいいから軍人等の人を参加させることが求められるのです。
97%を海運により繁栄を享受している我が国は、国際社会と共に世界の安定化に寄与すること必要不可欠なのです。
 
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