<男女を超えた理想の夫婦?>天海祐希主演「偽装の夫婦」は本当に幸せな結婚を問うドラマ

テレビ

河内まりえ[メディアゴン編集部]
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日本テレビ系で放映中のドラマ「偽装の夫婦」は、ただ笑って見ていてはいけないドラマである。
天海祐希演じる「嘉門ヒロ」は、子どもの頃に両親を亡くし、孤独を感じながら生きてきた。しかも付き合ったことのある唯一の男性「陽村超治」(演・沢村一樹)に逃げられてしまい、さらに心を閉ざす。誰にも本音を語らず、愛想笑いで自分を偽る人生だ。
久しぶりに再会した超治はゲイになっていた。ヒロとつきあったおかげで超治はゲイを自覚し、自分に正直に生きることを選択したのだ。そして、超治はヒロにとんでもないお願いをする。

「結婚してほしい」

超治はゲイである。女性を愛しすることはできないし、本心で女性と結婚したいと思っているわけではない。ヒロに結婚を申し出る理由はただひとつ。病気の母親を安心させるために偽装結婚をしてほしいというのだ。
もちろん、そんな一方的な依頼を断るヒロだったが、上京してきた超治の母親と超治のペースに乗せられて、なし崩し的に結婚写真、婚姻届け、結婚披露宴と話が進んでしまう。しかし、超治は偽装結婚の相手を誰でも良いとは言っていない。親友として心を許せるヒロだからこそ結婚したいのだと言う。
物語は超治に巻き込まれるように、母子家庭の親子を助けたり、不良グループを撃退したりするなど、自分に自信のないはずだったヒロが、次第に周囲の人に感謝される存在となっていくように展開してゆく。
登場人物の描き方もいい。ヒロを自分のペースにどんどん巻き込んでいく超治。人の話を聞かない超治の母親。売れないマジシャンの従兄弟。誰にも心を開かないヒロと、周りの人々との掛け合いが魅力的だ。
第三話、ヒロと超治が初めて一緒に観た映画をまた二人で観るシーン。ここはとても印象的だ。超治が映画を観ながら語りだす。

「男女の垣根を超えて固い友情で結ばれた親友がいたらどんなにいいだろうって思ってたなあ。今、そうなっているのか。俺たち。ありがとうな」

「いえ。別に」

いつものようにそっけなく答えるヒロだったが、超治を追うまなざしが心なしか柔らかく見える。超治に対して親しみを覚えているような安心した表情にも見える。恋愛を超越してしまった理想の夫婦像がそこには描かれていた。「偽装の夫婦」というより、超治の語る友情という絆で固く結ばれた夫婦といった方がしっくりくる。
夫婦とは何だろうか。本当の幸せとは何だろうか。たくさんの問いを投げかけてくるメッセージ性に富んだドラマである。そこが「ただ笑って見てはいけない」考えざるを得ないそんな心境にさせるドラマだ。
 
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