<個性と専門性と年齢に期待>元フジテレビ菊間千乃アナ 弁護士としてテレビ復帰
高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]
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こんな言い方をしては悪いが、最近のテレビを見ていると同じような局アナが蔓延しているような気がする。
個性にあふれたという状態からは程遠い。局アナは個性で採用されているわけではないのだろうが、どこか似ている。それは男も女も同じだ。逆にあまり強い個性は困るということかもしれない。強い個性はハマるときは良いが、ハマらないときには邪魔になるから、ということなのだろう。
最近、元フジテレビアナウンサーの菊間千乃さん(2010年・司法試験合格)が、単発番組ではあるが弁護士としてテレビに復帰するということを知った。フジテレビ退社後9年目だそうだ。応援したくなる話だ。
一般には局アナに個性が出てくるのは30歳を過ぎてからだろう。知識も増えやっと専門が出来て経験が役立つようになる。説得力ある説明もようやく出来るようになるだろう。
だが、局アナの世界では経験があたかも「いらない」という風に見えてしまう面もある。やっと30歳を過ぎて経験値が上がると、また若い経験のない人にとって代わられるからだ。男も女も基本的には同じだ。それが起こらないのはほんの一部の人にすぎない。
菊間さんは法律と言う専門を持ってテレビの世界に帰ってくる。今後、説得力ある話が出来るかわからないが期待は出来るだろう。
ニュースなどで「ひとつの話」を途中でしゃべり手が交代して話すさまを時々見かけることがある。もちろん、元の文章があるのだろう。
しかし、「それは誰の言葉なのだろう」と、ふと疑問に思ってしまう。自分の言葉ならそれを次に違う人が話しを続けると言うことは考えられない。やはり代読なのだろう。だから局アナに強い個性は必要なくなる。
まだニュースならば良いのかもしれない。原稿があると見ている誰もが知っているのだから。だが、解説や意見の場合はどうなのだろうか。その風潮はニュース番組以外にも広がっているような気がする。
テレビには自前のキャスターやMCが育ちにくくなっているのかもしれない。個性が第一ではなくなっているのだから。
テレビ局を離れたアナウンサーが急に個性を発揮し、評価されるようになる。局としてはもったいないことだ。たぶんそれだけの能力のある人がいるのだろう。弁護士になるのと同じように。「かわいい」というのは最も大事な特技であるわけではない。後はどれだけ説得力を持つかが重要だ。
説得力のある一家言持つキャスターやMCをどう育てるか。まず、自分の言葉でしゃべる、それがキャスターやMCの条件だろう。そこに魅力がなければいけない、「熱」みたいなものが必要だ。
だが、そういう訓練を受けていなければなかなか魅力の発揮はできない。現場に行かないチーフディレクターやデスクが自前の原稿を代読させようとすれば説得力はなくなる。どの番組も同じようなことを言うことになる。
本来個性があるからひとつひとつの番組が他とは変わってくる。MCは家長みたいなものだろう。その家にはその家の雰囲気がある。だから代読では勤まらない。家の顔なのだから。
ぜひ自前のキャスターやMCを育てて欲しい。
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