<激変するメディア地図>そのメディアにお金を払いますか?
齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]
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ホリエモンとひろゆきの週刊プレイボーイの対談が本(「ホリエモン×ひろゆき やっぱりヘンだよね」堀江貴文・西村博之著/集英社2016)になった。常識にとらわれない2人の対談が面白い。対談といいつつ、超多忙な二人はLINEメッセ―ジでやりとりしていたらしいので対談というと多少語弊がありそうである。
それはさておき、2年ほど前にトランプは意外と頭がいいと現状を予想するような言説もあり慧眼ぶりを披露しているが、「今後のテレビ局って?」というテーマでの対談(2014年)では、ネット放送へコンテンツを提供している海外のテレビ局を例に、
堀江「昔ってテレビ局が地主でテレビ制作会社という小作人が育てたものを放送することで大儲けできていたんですけど、今はテレビ局がコンテンツを作ってネット企業に流すという小作人になりつつある」
と述べている。
ちょうど東洋経済が「そのメディアにお金を払いますか」という特集をしていたので読んでみた(2016年11月19日号)。週刊東洋経済は週刊誌の体裁をとりつつも毎号はっきりしたテーマをもとに充実した特集を売りにしている。
時事ネタも一定配分で掲載してはいるが、この特集目当てにバックナンバーの売れ行きもいいらしい。週刊誌というよりはムックや新書的な売れ方をしている媒体、というところだろうか。もちろんウェブ版も充実している。
さて、特集ページにはいるとまずは基礎的なデータ編。議論の前にデータをコンパクトに見せるのはなかなかよいやり方である。ここで目を引くのは「電通総研メディアイノベーション研究部 キュレーション時代の『ニュース』と『メディア』の行方」という調査結果だろうか。
15歳から59歳までの年齢層で、どんなメディアを情報源として頼りにしているか、また頼りにしていないのはどのメディアかという調査である。これが見事に40歳を境にわかれており、旧来型メディア(いわゆる新聞、雑誌、テレビというマスメディア)を信頼する層は50歳以上(この層はネットニュースなどネット系メディアを信頼しない)、反対に15歳から39歳ではSNSやネットニュースを信頼するがマスメディアは信頼しないと見事に逆転する(40歳代は境目になるのか、あまり傾向としてはでていない)。
ただし、有料なのはNHKの受信料や新聞、雑誌であり、ネットニュースやSNSはアプリ含め無料の場合が多い。ネット系メディアの収益の柱はまだ広告収入のようだ。
ここから、旧来型メディアの現状把握に移る。NHKとはなんぞやからはじまりその問題や新聞を巡る苦境、ファイナンシャルタイムズを買収した日経の戦略などマスメディアも手をこまねいているわけではなさそうだ。しかし、将来はなかなか厳しい。
スマホニュースで急拡大をするLINEニュース、民放テレビ局からネット配信メディアに広告料が流れている調査結果など、メディアをめぐる現状が切り口を変えて続く。コンテンツ制作会社の視線もテレビからネット配信にむかいつつあること、スポーツ配信の世界も英国のDAZNの参入でJリーグの放送権料が破格に上がったこと、女性誌を動画で配信するCチャンネルなどなど、目まぐるしいほどのメディアをめぐる状況である。総じて、コンテンツ制作力のある会社にとっては、選択肢が増えた分、追い風が吹いている様子だ。
特集を読み終わった後には、旧来メディアの時代の常識やルールが次々に塗り替えられて、すさまじい速さで業界の地図が変わっていくことがうっすらと理解できる。しかし速さが特徴のネットの状況は、おそらく半年や1年でどんどん変わる。
東洋経済にはぜひ、これに続く第2弾を企画してもらいたいところである。
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