「日本はもはや先進国ではない?」たくさんの理由

社会・メディア

物部尚[エッセイスト]

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「日本はもう先進国ではないなあ」と、筆者が思い始めたのは何年くらい前だろう。

現在、日本の国民ひとり当たりのGDP は、世界第何位だと思うだろうか。まず、答えてみて欲しい。正解は以下の通り。西暦2000年にルクセンブルクに続く世界第2位だった日本の当該指標は2018年で第26位である。香港(3位)、シンガポール(8位)、マカオ(17位)より、当然のように下位で、オーストラリア(14位)、ニュージーランド(24位)にも抜かれている。韓国(28位)、台湾(34位)の足音もヒタヒタと迫っている。

ご存知のように、国全体のGDPは、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位で、このランキングは2000年頃から比較して、大きく落ちたとは言えない。国全体でも、個人でも世界上位のランキングであるということは、日本人を安心させたに違いない。ところが、国全体のランキングは上なのに、個人のランキングのあれよあれよという低下。これはおかしいのではないか、そう筆者は思い始めた。

2000年代初頭、筆者は、アジア、オセアニアの国々を頻回に訪れた。その時感じたのは、各国の物価がきわめて安いことであった。「日本よりずっと安い。買っておかなきゃ損だ」と思って、顰蹙されるくらい、日用品を買った。各国の物価が安いのは、「国民の収入が日本人ほど高くなく。安くしないと売れないからだ」という解説を現地の人からは聞いた。日本人として少し得意な気持ちになった。

ところがである。今、日本に観光にやってくるアジア人やオセアニア人からは、全く逆の事を聞く「日本は全部安い。買わなきゃ」お馴染みの100円ショップのダイソーの品物は日本では100円だが、タイでは60バーツ、1バーツは3.5円であるから、タイでは、日本で100円の物がを200円で売っているのである。これは円高だけでは説明出来ない高額である。

いまや、日本に買物に来るアジア人にむかって、「安いよ、安いよ」と声をかけて物売りをしているのが日本なのである。インバウンドなどと言って、外国人旅行客が買物してくれるのは喜ぶべきことだという人もいるが、本当に喜んでいいものなのか。分かりやすいようにおおざっぱに言うが、昔は日本人が海外に出掛けてお得意さん扱いされていたのである。ソレが今は、日本人が奉仕する側に回っている。

日本にカジノ開設。日本人は外国人客のために博徒になる必要があるということだ。外人のふところに無理矢理、手を突っ込んで、カネをむしり盗る商売を始めるのが先進国なのだろうか。(先進国などと呼ばれるのはなんの価値もない、という議論はこの際措いておく)

世界経済フォーラム(WEF)が発表した、世界各国の男女平等の度合いランキング。2019年「ジェンダー・ギャップ指数」は、以下の通り。調査対象153カ国のうち、日本は121位と前年(110位)から順位を落とし、過去最低である。記事は「女性の政治参画の遅れが響き、先進国では最低水準となっている」というが、この表現は違うだろう。「日本は先進国ではない」のである。(この際、先進国などと呼ばれるのはなんの価値もない、という議論は措いておく)

2020年には東京オリンピックがある。オリンピックは国威発揚、オリンピックは開けるだけの国力があることを誇示すイベントだが、そんなことでもやらないと、国力を世界に認めてもらえなくなったのが日本という国なのだ。1964年の東京オリンピックは戦後のなりふり構わぬ先進国入りの欲望を世界に見せつけるものであったが、2020年のそれは、日本が、先進国の仲間からこぼれ落ちそうな崖っぷちにあることを示すイベントになるかも知れない。(この際、先進国などと呼ばれて、何が嬉しいのだとは言わずにおくとしよう)

アメリカのスポーツイベントの空きシーズンである8月、真夏の炎暑オリンピック開くことを押しつけられて、それを吞まざるをえない日本のどこが先進国なものか。「がんばれニッポン! がんばれニッポン」その一色に染まることが求められそうな日本人は先進国に住んでいるのか。オリンピックに使う金があるならそれを貧困対策に回した方がいいと思わざるを得ない日本は先進国なのか?(先進国という概念自体必要なのか)

日本の経済はオリンピックが終わると、その反動で落ち込む。必ず落ち込む。日本は熟れた先進国ではないから、身体に悪いカンフル剤を打ち続けざるをえない。2025年大阪万博開催に派、反対しておこう。日本は先進国ではなく。きらりと光る小国を目指すべき時に来ている。

 

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