<敦賀原発は生け贄か?>フィクションのドラマや漫画でもありえない「廃炉アリバイ作り」

政治経済

石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]
***
まずは以下のような状況を想像してほしい。

  1. あなたは会社でAさんとの不倫を疑われている。
  2. それについて、社内調査が行われた。
  3. あなたは、自分が無実であることを一所懸命に説明してきた。
  4. だが、社内調査では、なぜか「あなたはAさん、Bさん、Cさんの誰かと不倫しているはずだ!」と結論付けられてしまった。(もっとも、社内調査では、Aさん、Bさん、Cさんとの不倫関係があることについての証拠は一切示されていない。)

さて、これはあくまでも「仮定」の話だがら、こんな結論ってあるだろうか?
こんないい加減なロジックで不倫を結論付けられたらたまったものではない。テレビドラマや漫画だって「これ、飛躍してない?」とか「フィクションとはいえ、現実離れしすぎてつまらない」と思われるはずだ。
ところが、これによく似た話が実際の社会にはあるのだ。
日本原子力発電・敦賀原子力発電所の敷地内にある断層に関する原子力規制委員会の「有識者会合」が下した結論がそれだ。
今年3月25日、敦賀原発敷地内破砕帯について規制委は有識者会合が取りまとめた評価書を受理した。この評価書について、日本原電は4月16日に「66の問題点」があるとの見解を発表している。それ以前にも、日本原電は1月6日に、昨年2014年12月10日のピア・レビュー会合で用いられた評価書案について、「63の問題点」があるとの見解を発表している。
ようは問題点は解決するどころか、三ヶ月で3つも増えたことになる。この増えた項目の中で興味深いものがある。
有識者会合による昨年12月10日の評価書案には、

「K断層は、D-1破砕帯と一連の構造である可能性が否定できない」

と書かれていた。しかし、今年3月25日の評価書では、

「K断層は、D-1破砕帯等、原子炉建屋直下を通過する破砕帯のいずれかと一連の構造である可能性が否定できない」

と書き換えられ、活断層であるとの結論になった。この「いずれかと一連」に関する具体的な根拠は一切示されていない。
これはどういうことか?
規制委が有識者会合の評価書を受理した3月25日の臨時会見で、規制委の石渡明委員は、「いずれかと一連」の根拠について問われ、

「細かな点については今それを言うのは差し控えたい」

などと述べている。これにはさすがに「おいおい、ちょっと待て」と誰もが疑問に思うはずだ。

  • なぜ、説明を「差し控え」なければならないのか?
  • 「いずれかと一連」の根拠について、いつ誰が説明するのか?
  • この評価書の取りまとめ責任者は当の石渡委員ではないのか?

これは、規制委が行うべき「科学的・技術的な判断」ではないと疑われても仕方がない。
筆者は、他の原発と同様に敦賀2号機を巡る規制委の動向に関しても今までつぶさに見てきた。その中で、規制委は、敦賀2号機については「廃炉ありき」で突っ走っているようにしか見えない。
新規制基準で寿命が40年とされた日本の原発において、敦賀2号機は寿命まであと12年もある。そうした「まだ若い原発」を廃炉にすることで、政府・規制委は政治やマスコミに対して廃炉実績のアリバイ作りをしたいのではないだろうか?
そんなふうに本気で思ってしまうのは、筆者だけだろうか?
規制委は、新規制基準への適否を判断する際には、科学的・技術的な根拠を真っ先に示す必要がある。そうでなければ、東日本大震災による福島第一原発事故で失われた日本の原子力規制に対する国内外からの信頼の回復はとても無理だ。
 
【あわせて読みたい】