[キングコング西野亮廣・インタビュー]圧倒的な赤字が前提の絵本こそ「誰も見たことのない絵本」だ


現在、キングコング・西野亮廣が、トップクリエイターを集め「完全分業制」によって絵本を制作するというプロジェクトを進めている。そこで必要となる制作費を集めるために西野がとった「クラウドファウンディング」という手法が話題だ。

クラウドファウンディングとは「目標・目的」を達成するための活動資金をインターネットを介して不特定多数の人たちから集める資金調達手法である。西野は、これまでにも、ニューヨークでの個展開催費用の約500万円を集めた実績を持つ。

6月3日にクラウドファウンディングサイト「ウィシム」(wesym.com:西野氏が今回利用しているクラウドファンディングのサイト)でスタートした西野の今回の目標は600万円。開始から3日目の6月5日の段階で集めた金額は約230万円。プロジェクト終了までのタイムリミットは残り88日だ。

開始から3日。最前線で息巻く西野亮廣に直接インタビューを敢行した。インタビュアーは、これまでの西野のクラウドファウンディングによる創作活動に注目してきたメディア学者で東洋大学・准教授の藤本貴之氏にお願いした。

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<西野亮廣インタビュー>

[藤本貴之 東洋大准教授(以下、藤本)]そもそも、賛否両論が出ることを覚悟した上で、「分業制」で絵本を作ろうと思われたキッカケはなんでしょうか?

[キングコング・西野亮廣(以下、西野)]あ、それですよね。僕、世界中であれだけヒットした『アナと雪の女王』の監督さんのお名前を知らないな、と思ったんです。もちろん、脚本家さんのお名前も、あのテーマソングを作られた音楽家さんのお名前も。これ、僕だけじゃなくて、ほとんどの人が知らないんじゃないか、と。でも、そういった「誰が作ったかよく分からない作品」が世界中を感動させたわけで。玄人は“作家”を前に出して語りたがるけど、子供や、その他大勢の方からすると、「誰が作ったか?」なんて本当にどうでもよくて、「何を作ったか?」だと。つまり、出来あがったものが全てで、それ以外のことはどうでもいい。そう考えた時に、僕より建物デザインが得意なイラストレーターさんはいらっしゃいますし、僕より色を塗るのが得意なイラストレーターがいらっしゃるわけですから、だったら、僕の名前なんて後ろに下がっていいので、そういった才能に声をかけて、集めて、「世界で戦える絵本」を作ろう、と。いわば、僕は「絵本監督」です。

[藤本]その「分業制」で制作する絵本の費用をクラウドファンディングで集めようとしているわけですね?

[西野]はい。「分業制で作られた絵本は何故存在しないんだろう?」と考えた時に、答えは簡単でした。つまるところ、絵本は発行部数が見込めないから、制作費をかけることができません。だから「一人」、もしくは文章担当とイラスト担当の「二人」で作るしか、これまで方法がなかった。しかし「分業制」には、まだ誰も見たことのない未来が眠っています。制作資金さえあれば、その挑戦ができるわけですから、クラウドファンディングで調達しちゃおう、と。

[藤本]分業制・・・といっても、その担当者たちにはトップクリエイターを集めようとしているわけですよね? いかにクラウドファウンディングとはいえ、人件費だけで膨大な制作費がかかりますよね。そのリスク・・・恐くないですか?

[西野]僕、最近「赤字」にハマってるんです。

[藤本]赤字にハマっている(笑)

[西野]はい。僕、誰も見たこともないモノを作りたくて、「誰も見たこともないモノって何かなぁ?」と考えた時に、「企画会議の段階で落ちている企画」だと思いました。そして、「企画会議で落ちる企画って何かなぁ?」と考えたら、それは「圧倒的な赤字が見込めてしまうモノ」だと気づいたんです。

[藤本]なるほど、当たり前ですが、実に正しい見解ですね。「赤字が前提になっている企画」は絶対に通らないです!

[西野]はい。だから、見たことがない。僕らは「圧倒的な赤字が見込めてしまうモノ」は見たことがないんです。そして、人は「見たことがないモノ」に集まります。で、これ、逆説的なんですけど、なるべく赤字を押さえようとして作られたモノは見たことがあるから、そこに人は集まらず、結果的に赤字になります。でも、「圧倒的な赤字が見込めてしまうモノ」は見たことがないから、「ナンジャそれ?」と興味をひいて、人が集まります。僕の今回の絵本は制作費が600万円で、普通に出版社に持ちかけたら、はね返されるのですが、「見たことがないモノ」だから人を集めることはできます。だったら、出版社に持ち込む前にクラウドファンディングで人を集めて、赤字を相殺すればいいのではないか?と考えました。「赤字」の中に、けっこう可能性が眠っていると思うんです。

[藤本]さて、その結果ですが、クランドファンディングはスタート初日で200万円が集まりました。これはやっぱり、大変な反響です。これに対しては、どのようにお考えですか?

[西野]僕、ホント、日本中から嫌われているので、僕を応援してくださる数少ない人達は、その分「隠れキリシタン」的な結束力をお持ちで、僕が何か行動を起こす時には毎回とても心強い後押しをしてくださいます。
ただ、その力だけで押し切れるほど、今回の挑戦は甘くありません。
事実、二日目に集まったお金は8万円です(笑)。

[藤本]早くもバテてますね(笑)

[西野]はい。さっそく大ピンチ(笑)。「隠れキリシタン」が隠れなきゃいけない理由がよく分かりました。数が少ないのです(笑)。皆さん、はやく「ウィシム」に駆けこんでください!! まあ、勝負はここからですね。隠れキリシタンの数が少ないとはいえ、僕はその方々の想いを背負ってしまっているので、責任を持って今回のプロジェクトを成功させて、キチンと楽しいところにお連れしようと思います。

[藤本]しかし、「芸人さん」が個人でこういった活動をされることに対する抵抗はありませんでしたか?

[西野]僕は「芸人」は、“職業名”であり、同時に“姿勢の名前”だと捉えています。みんなが右に進んでいる時に、自分は左に行っちゃって、「ええー?」と驚かせたり、みんなを考えさせたり、皆を困らせたりするような奴(笑)。そういう奴がとっている姿勢の名前が「芸人」である、と。音楽で言うところの、「ロック」という言葉の使われ方に似ているかもしれません。アコースティックギターを弾いていても、「あいつ、ロックだね」みたいな。なので、皆さんがよく言われる「芸人のクセに〇〇をしやがって…」という言葉は僕の中では日本語として矛盾しているんです。もちろん、この言い分はあまり理解されず、現在、強烈に嫌われます。助けてください。

[藤本]なるほど、芸人が芸人らしならぬことをする生き様こそ、「芸人」であるというわけですね。さて、最後になりましたが、西野さんの今後の予定を教えてください

[西野]ウォルト・ディズニーを倒します。

クラウドファウンディングは、目標金額に達しなければ、集まった資金が返却されるシスタム。「集まった分だけ使う」ということはできない。残り約3ヶ月でどうなるか? 西野亮廣の挑戦ははじまったばかりだ。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。