「アメトーーク」で白々しいボケが見抜かれた芸人は生き残れない


高橋維新[弁護士]

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2015年6月11日放映のテレビ朝日「アメトーーク」のテーマは「芸人ドラフト会議」であった。

出演する4人の芸人(バカリズム・有吉弘行・東野幸治・ブラックマヨネーズ小杉竜一)が、「自分がMCの冠番組を持つとしたら出てほしい芸能人」をプロ野球のドラフト会議式に指名していくという企画である。

筆者は以前から、アメトーークは「何かをバカにする回」はおもしろいが、「何かを褒める回」はつまらないと述べている。ところが、今回の企画はこの二分法では掴みづらい内容であったように思う。「何かを褒める回」とも「何かをバカにする回」とも言い難いのだ。

この内容で、どうやって「笑い」をとるのか?

見ていて分かったが、笑いが生じていたのは、MCが想定している番組像やキャスティングがおかしい時だった。

  • バカリズムは「バカリズーーム」という丸パクリの番組名を提案する。
  • 有吉は「有吉のさわやかサンデー」という番組なのにさわやかさからは程遠い人選をしてくる。
  • 東野は闇を抱えた芸人ばかりを集め、有吉から「よしもと製作のCSの番組」「深夜3時くらいにやってそう」というたとえツッコミを受ける。
  • 小杉は小杉で、ジャングルポケットから2人も人を持ってくる。
  • 極めつけはアンジャッシュ渡部に佐々木希をぶつける有吉である。

つまるところ、結局この4人の想定やキャスティングがおかしいことを(バカにして)笑っているのである。

この手の仕事が来た時に、芸人としてはどうするべきなのか。芸人なので、笑いをとらないといけない。そうすると、ボケないといけない。ボケるとなると、番組も、キャスティングも無茶苦茶にすると簡単である。

「明石家さんま」や「松本人志」のように、どう見ても自分を食いそうな大御所を持ってくるとか、「リットン調査団」や「ビートきよし」みたいな「誰だよ」となりそうな人を配置するとか、「江頭2:50」や「たむらけんじ」みたいな飛び道具しかいないとか、「ふかわりょう」と「ROCKETMAN」を同時に配置してみるとか、ベタなところだと考えられるのはこんなところである。

こういうボケをかましていけば、MCの宮迫博之や他の芸人がツッコんで、笑いに変えてくれる。ここで質の高いボケをできるだけたくさん考えつく力が、大喜利力である

他方で、ボケをせずに真面目にやるという方法もある。この場合でも、全く笑いにならないわけではない。真面目にやっているのに、結果、ボケになってしまう人というのが一定数いるのである。ド天然の人はこの範疇に属する。

また、根が変人すぎて本人は真面目にやっているつもりでも第三者が見るとどう考えてもおかしいというような場合もある。ただ、おかしくなるかどうかはやってみないと分からないところがある。

また、わざとボケる場合でも、ふざけ過ぎると視聴者が「ウケ狙いでわざとやっているな」と感じて、ハードルが上がってしまう。視聴者には、「この人は真面目にやってこれなのだ」と思わせておいた方が、笑いにおける奇襲の強みを存分に発揮できる。

更に、別の観点であるが、番組や視聴者が何を求めているかを読み取るのも重要である。もしかしたら番組は、ボケ一切なしで真面目に自分の望む番組像を論じてもらうことで、(ファニーさではなく)インタレスティングさを出そうとしているのかもしれない。視聴者もそういう映像を望んでいるのかもしれない。

その中でわざとボケると、「空気を読み違えた」ことになり、スタッフや視聴者の反応も良くないことになるだろう。また他方で、視聴者やスタッフの想定を裏切った方が面白くなるのではないかということも考える必要がある。

特に、事前にスタッフが想定していたシチュエーションではあまりハネなかった場合には、現場の演者はこういうことも考えて軌道修正を図る必要があるのである。

芸人たちは、ここで書いたような実に色々なことを考えながら現場に臨んでいるのである。スタッフからはどういう映像を作ろうとしているのか、事前にある程度説明があるだろうが、時にそれをも裏切る必要があるというのがプロの難しいところである。

今回出てきた4人の芸人のうち、バカリズムと東野は真面目に自分の望むキャスティングをしゃべっている印象を受けた。東野は、根が変人であるために、真面目にやってもどこか偏りのあるキャスティングになってしまい、その点を終始有吉からツッコまれていた。

無論、これも東野がわざとボケたのかもしれない。わざとだとしたら、わざとウケ狙いでやっているのだと感じさせなかったのは東野の腕に他ならない。

有吉は「とにかく明るい安村」「HG」「オカリナ(おかずクラブ)」「蛍原徹(雨上がり決死隊)」などのネタ枠が多く、ふざけてボケている印象を受けた。ジャングルポケットから2人を入閣させた小杉もそうである。ただ小杉は、少しわざとらしさが過ぎたので、今回に限って言えば有吉の方が上手かったと言える。

ちなみに、自分のボケがわざとでないということを見せるには、「理由」をきちんと説明できる必要がある。(ボケでなく)真面目に考えてそうなったのであれば、絶対に理由があるからである。慣れていない人だと、ボケそのものを考えることに頭がいっぱいになってしまって、ボケの理由を聞かれても満足なことを答えられないことが往々にしてある。

そうなると、「この人はただボケを考えていただけなんだな」と思われてしまい、ウケ狙いでわざとふざけていると思われてしまう。また、せっかく「理由」を答えることでまた笑いをとるチャンスを与えられたのに、みすみすそれを逃してしまうのである。

ボケがウケれば、絶対に理由は聞かれる。自分の番組のひな壇に明石家さんまを座らせると宣明すれば、絶対に「なんでやねん」と言われる。

このとき、もうひとウケとれるような、そこまで行かずとも、少なくとも次のトークにつながるような「理由」も何か考えておくことが肝要である。生き残っているプロは、そのへんの抜かりがない。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。