<誰が情報番組を作っているのか>「鸚鵡返し」の意味を知らないテレビマンたち


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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帯で放送されるテレビの情報番組はどんな人たちがつくっているのか。身も蓋もない話をする。

それを説明するに当たって使う尺度は「学校歴」と「鸚鵡(おうむ)返し」と言う言葉である。

なぜ「鸚鵡返し」と言う言葉を尺度に使うのか。以前、テレビ局社員のバラエティのディレクター(学校歴・東大)と話していたとき、こんなことがあったからだ。

筆者が「鸚鵡返し」と言う言葉を使うと、ディレクターは、その言葉を若い子たちは絶対に知らないと言い張る。筆者の方は「そんなことはありえない」と言う主張である。

そこで、番組に配属されたばかりの20歳前後の番組制作プロダクションのADを三人呼んで聞いてみた。すると、全員意味を知らない。言葉の存在も知らない。筆者はそれ以上話す気が失せてしまった。

さて、これから述べることは各テレビ局を概観しての一般論なので、全く同じでないということをお断りして話を始める。

まず、帯の情報番組(放送時間は2時間から3時間)で制作に当たる人員は、月曜日から金曜日まで合わせて、120人から150人。150人居れば人件費に金を使っている番組であろう。

そのトップに立つのが制作プロデューサーとか、エグゼクティブ・プロデューサーとか呼ばれる人。40代後半。学校歴にすると東大、京大、一橋等の旧帝大、早慶。大都市圏なら、中学受験をしているし、そうでなくても、大抵名門高校出身なので、中学受験の必須問題でもある「鸚鵡返し」は、問題なく読めるし意味も分かる。

下手すると「鸚鵡」という漢字が書けたりする。 このプロデューサーは番組の内容の総責任者であるから、実績がある社員、あるいは、実績が出せそうな社員が選ばれる。人選に経営トップや編成局が影響力を及ぼすこともある。

筆者は、人選に経営トップが口を出すのは当然だと思うが、編成局は出来るだけ黙って見守った方が番組は上手くいくという経験則を持っている。このエグゼクティブ・プロデューサーの地位は大変孤独である。誰も味方が居ないと言う思いに囚われることもある、なにしろ番組を外せば一ヶ月で首をすげ替えられることもある、番組で一番偉い人なのである。

社員でプロデューサーという名のつく人は他にもいる。

  • 予算管理のプロデューサー。結構偉い。
  • 危機管理担当プロデューサー。大抵、報道局出身。原稿の用語の使い間違いなどに目を光らせる。被告と容疑者と犯人の使い分け、隠し撮りはダメなども口を酸っぱくして注意する。どちらかというと「やってはダメ」を指摘することが仕事だと思っている人が多く、「やるにはどういう手続き踏めばいいか」を、考える人は少ない。
  • 渉外担当プロデューサー。山のように持ち込まれる「宣伝してくれ」と言う要望を整理する。宣伝の要請は編成から、事業局のやっている映画、イベント、興行、スポンサーから、番組個別から、営業から、タレント事務所から、知り合いから、タイアップ屋から、重役から、社長から、ありとあらゆる人から持ち込まれる。持ち込まれる要望を全部取り上げていたら番組の内容がむちゃくちゃになってしまう。どれを取り上げてどれは取り上げないか、これを差配する渉外担当プロデューサーは、非常に重要で腕力の必要な役目だ。最近は「上の了解は得ています」と言って、宣伝VTR を現場に直に持ってくる姑息な奴も居るのである。しかし、このところの風潮は頼まれたら全部宣伝すると言う方針の番組が多いのは嘆かわしいことだ。
  • スポーツ担当プロデューサー、芸能担当プロデューサー。両方とも利権の調整が大変な仕事である。

情報番組には少ないが、最近目立つのがAP(アシスタント・プロデューサー)と言う仕事だ。昔はなかったポジションだ。この仕事はタレントのキャスティングをプロダクション別に受け持ったりしていて、デスク上がりの女性が務めることも多い。キャスティングと言う肝はヘッドのプロデューサーがやるべし、と筆者は思う。

月から金まで、曜日ごとをまとめる曜日プロデューサーがいる。これはいわば現場の長。5人日替わり、3人で回す、などやり方はいろいろ。社員がやることも、プロダクションの人間がやることも、社員とプロダクションの2人体制と言うこともある。

プロダクションの人間でこの曜日プロデューサーを務める人間の学校歴は実に様々。放送専門学校卒、日東駒専、大東亜帝国、関関同立、成成独国武。大学中退という人も昔は居たが今は居ない。

彼らの場合、「鸚鵡返し」に関しては「意味が分かり、読める」としておこう。実力者が務める地位だからである。曜日プロデューサーがプロダクション出身の場合、この人物は大抵優秀である。プロダクションの人間はここが出世の頂点なのでこの位置を目指す。しかし、これになれるのはプロダクションの人間30人中1人ぐらい・・・というのが、筆者の実感である。

この下には、取材ディレクターという身分の人がいる。テレビ局社員がこれを務めることもあるが、大抵はプロダクションの社員である。学校歴はもう何でもあり。「鸚鵡返し」は5割が知らない。

この取材ディレクターにはADを3年くらい努めて、認められればなれるのだが、プロダクション側はADの報酬より高いディレクターの報酬を受け取りたいので、大抵は自動的に昇格する。この人たちは事件も政治経済も皇室も芸能もスポーツも外交もその場でにわか勉強して、取材するのだから、恐ろしいと言えば恐ろしい。

その下にAD(アシスタトディレクター)と呼ばれる人が5人くらい。ほとんどが派遣会社からやってくる。不思議なのはその中に「鸚鵡」という漢字が書ける人がいることである。その人はこんなことも言う。

「ボク、漢検準1級なんです」。

このAD群には、テレビ局の新入社員も組み込まれるのだが、昔ははっきり見た目で区別がついた。しかし、最近はテレビ局社員ADと派遣社員ADの区別がつかなくなった。勿論、学校歴の方も最近は区別がつかなくなった。

テレビ局に優秀な東大卒が多かったのは、20世紀までだったように思う。

 

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