<元海上自衛隊トップ・海将が緊急提言(3)>「抑止力」中国の尖閣進出を阻む「平時に他国の仲間を助けることがなぜ今、必要なのか?」


伊藤俊幸[元・海上自衛隊 海将]

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我が国が所謂「グレーゾーン事態」の場合、自国を守っている他国の仲間に対する攻撃を排除できないと述べました(http://mediagong.jp/?p=11434)。そこで今回のテーマは「何故今必要なのか」です。

もし今、我が国に対する武力攻撃が生起した場合、我が国は個別的自衛権を発動し日米は安保条約に基づき共同対処することになり、自衛隊と米軍は相互防護が許されます。言い換えれば所謂「日本有事」であれば他国の仲間を助けることができるといえます。

さて、ではなぜ昨年2014年7月の閣議決定による「新3要件」(http://mediagong.jp/?p=11432)や新たな安全保障法制が今必要なのでしょうか? それは抑止力を今以上に高め現状を変更しようとする他国の意図をくじく必要があるからです。

ご承知の通り、最近、南シナ海島嶼での中国の施設等について報道されています。中国は1950年代に南シナ海ほぼ全域を自国領域だと宣言しました。

1987年には海軍艦艇によるパトロールを開始し、翌年には各沿岸国と軍事衝突を起こし島嶼を占領してしまいました。実は同様のことが東シナ海でも起きているのです。

1971年「尖閣列島は中国領土」と宣言して以来、1999年からは海軍艦艇によるパトロールが始まっています。しかしその後16年が経ちましたが、ご承知の通り尖閣は占領されていません。またベトナムの船舶は、中国巡視艇「海警」から国際法違反である体当たりや放水をされるという傍若無人な扱いを受けています。

一方、尖閣では「海警」は時々領海侵犯をしますが、基本的には大人しく徘徊しているだけです。この違いは何でしょう?

そうです。

「南シナ海」と違い「東シナ海」では、海上保安庁や自衛隊の警戒監視や日米同盟の諸活動によって一定の抑止力が効いているのです。しかし中国によるこれらの動きは、拡大すれ減ることはありません。平素から米海軍のみならず豪海軍をも含む他国の海軍艦艇と共同パトロールして抑止力を更に高める必要があります。

今でも共同パトロールは出来るのかもしれませんが、妨害がはいった場合に排除できない海自艦艇と一緒では相手からなめられてしまいます。抑止力を更に高めるためには、まず平時に共同パトロールする姿を見せる。そして他国が妨害しようとした場合は断固排除する。

このように「グレーゾーン事態」の中でも、特に列度の高い事態が「存立危機事態」なのです。今法案はあらゆる事態に対応できる体制を構築することで「抑止力」を高め、無用な紛争を避けるとの考え方で作られているのです。

 

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伊藤俊幸

伊藤俊幸(いとう・としゆき)元海上自衛隊トップ・海将。 昭和33年生まれ。防衛大(機械工学)卒業。筑波大学修士課程修了。海幕防衛部防衛課(平成6)、潜水艦あらしお副長兼航海長(平成8)、潜水艦はやしお艦長(平成9)、外務事務官(平成11)、第2潜水隊司令(平成14)、海幕監理部総務課広報室長(平成15)、海幕指揮通信・情報部情報課長(平成18)、情報本部 運用支援担当情報官(平成21)、海幕指揮通信・情報部長(平成22)、海上自衛隊 第2術科学校長(平成23)、統合幕僚学校長(平成25)を経て。平成26年、呉地方総監。平成27年退職。