<安保法案可決で見えて来たこと>「日本共産党が目指すのは共産主義革命?」と聞いたら返ってきた妙な返信

政治経済

保科省吾[コラムニスト]
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国の主権は国民にある。主権在民である。
しかし、国民全員が会議に参加するのは現実的ではないから代議制を取っている。国民が選挙で国会議員を選び、意見の表明権を付託する。選挙は大切な国民主権の行使である。
2014年(平成26年)12月14日に施行された第47回衆議院議員総選挙は、小選挙区比例代表並立制で、実施された。
「自民党マニフェスト簡易版」によれば、以下のようなものだった。
自民党の第一の主張は「アベノミクス三本の矢を強力に進め」。まずは、日本に「経済の好循環」をもたらすことであり、それ以外の主張は見えにくい誌面が構成されていた。
「日米同盟を基軸とした揺るぎない安全保障政策で国民の生命と国益を断固として守り」という曖昧な表現では、アメリカ議会で約束した集団的自衛権の行使、普天間への辺野古移設の強硬実施を含意していることを国民の目から隠していると筆者には感じられた
日本は武器輸出三原則を堅持し、

  • 共産圏諸国向けの場合
  • 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
  • 国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

これらへの武器の輸出を禁じてきたが、安倍政権は新たな政府方針として『防衛装備移転三原則』を閣議決定した。武器の輸出入を基本的に認め、その上で禁止する場合の内容や、厳格な審査を規定する内容である。
これも即ち、選挙に臨む段階から安倍政権が実施したい政策であった。
「雇用の増加」という政策目標の裏には派遣労働法改正で、派遣労働者を経営側が安い賃金で使いやすいようにすると言う狙いが隠れていた。
TPPについては「TPP交渉はわが党や国会の決議を踏まえ、国益にかなう最善の道を追求します」と言う表現であったが、これはTPPはあくまでも推進するという決意の表れである。TPPが、日本の文化そのものを破壊するもので、アメリカの世界経済征服計画の一環で、範囲を大きくしただけの鎖国にすぎないというTPP反対論に真っ向から対立していることが読み取れる。
「国民生活・社会活動の基盤となる安定的かつ低コストのエネルギー需給構造を確立します」という表現もあるが、これは原子力発電所の推進を示している。
これらの自民党の考えをすべて読み取ることは、(主権者でありながら)一般国民には、とうてい無理なことかも知れない。景気を良くするんだと言うシングルイシューポリティクス(単一争点政治・例 「郵政民営化が必要だ」)という選挙テクニックに目くらましされて、自民党は議席過半数を獲得する大勝利をする。
安倍首相は、選挙が自らの政権に、上記の国民の目から隠されたあらゆる政治方針にお墨付きを与えたと解釈する。これは、代議制の上に成り立った政権としては当然のことである。国民が誰に代議権を付託するかは、国民自身の自由な判断にゆだねられる事が保証されているからである。
ところで、この、小選挙区比例代表並立制というのは、日本の選挙制度として日本人の国民性になじんでいるのか。小選挙区というのは基本的に二大政党の(日本は自民党と民主党)どちらかを選ぶという2択である。どちらかに票が傾けば、一気に地滑り的(これは地滑りがあった所の人々の感情を傷つけるから放送では使用してはイケない言葉だそうである)勝利となる選挙制度である。
政権の交替が起こるので、良い制度だとする人もいる。だが、政権交替によって官僚まで総取り替えするなら実効性があるが、官僚は替わらない制度では効力は限定的である。
日本人の感性に合うのは中選挙区ではないかと、筆者は考える。八百万の神々がいて、世間様を最上位の神とする日本人には3人くらいを選べる中選挙区が合っている、死に票も少ない。
2014年の選挙で僕は困った。自民党の政策には反対である。民主党は頼りない。
「確かな野党」共産党にも気になるところがある。そこで共産党本部にメールで質問した。

「共産党が最終的に目指すのは共産主義革命ですか」

返事はどうせ来ないと思っていたら来た。

「最終的に目指しているのは共産主義革命ではない」

というので、その後に気になることも書いてあったのだが、その内容は見なかったことにして比例は共産党に、小選挙区は民主党に投票した。小選挙区では僕の票も含めて大量の票が死んだ。
こうして選ばれた自民党が集団的自衛権を可能にする安保法案を可決した。選んだ国民の責任であると言える。
中学受験をする小学生なら基本知識である三権分立はどうなったのかとも思う。
集団的自衛権が憲法違反なら、この成立の可不可を審査する違憲立法審査権を最高裁判所は持っているはずである。しかし「戦わない司法」は、自ら進んでは何も言わないだろうというのが大方の見方である。大体、1票の格差についても「違憲だが無効ではない」という矛盾した判断をしたのが我が国の最高裁である。どこかで歯車が狂っている。これも、国民がものを言わないせいか。
自民党は保守政党である。保守というと、守旧派とか、老害とか、頑迷固陋とか、抵抗勢力という言葉が思いつくかも知れないが、本来はそうではない。保守はあまり急進的な改革ではなく、穏やかでゆっくりした改革をしていこうという集団である。原発で言えば、一気に廃止するのは影響が大きすぎるから止めましょうと言う考え方が保守である。
対する革新は民主党ということになるが、革新はスピード感を持って国の形を変えていこうという政党である。
ところが、集団的自衛権に関しては自民党が革新であった。かつてならこの革新的制度改革を党内の保守派閥が抑えるという形があり得たが、利権だけを主張する派閥政治は良くないとなって、このところ、派閥は流行ではないようだ。
一方、民主党は集団的自衛権に関して保守である。よく民主党に対案を出せという人がいるが保守だから対案は今のままの個別的自衛権で良いということだ。
この民主党の考え方を支持したのが学生団体「SEALDs(シールズ)」を核とするデモである。民主党の岡田代表や野党も応援したが、方向を変えるうねりが国会内で起こるほどの大きな力にはならなかった
9月19日放送のサンデージャポンで爆笑問題の太田光が、「SEALDs(シールズ)」とは、名指ししなかったが戦前の一億火の玉も、戦後の一億総懺悔も、根は同じで、日本人が持つ「集団騒ぎのうさん臭さ」を指摘していた。それはその通りであると思う。
太田はその中で「民主党は憲法改正ですよ。しかも、集団的自衛権も行使は容認のはずだった」とする旨の発言をして、吉田明世アナウンサーが「訂正があります」と切り出し、「先ほど番組内で民主党は『集団的自衛権の行使を認めている』と放送しましたが、正しくは『安倍政権が進める集団的自衛権の行使は認められない』との立場です」と説明し、「訂正してお詫び致します」と謝罪した。太田は不服な顔をしていた。
太田の言っていることが間違いないとすると、次の選挙は本当に投票する先に困る。
「確かな野党・共産党」は、党是を破って選挙協力をして確かな野党ではなくなるらしいし、筆者が共産党からもらったメールは、正確にはこう書いてあったのである。

「日本共産党が(日本で)最終的に目指しているのは、共産主義革命ではありません。でも、共産主義はいい制度です」

 
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