<東京ディズニーランド記事への投書(1)>週5日勤務・専業キャストの上級ランクでも年収250万円・正社員登用困難という実態?


メディアゴン編集部

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メディアゴン編集部に次のような便りが届いた。10月29日に配信した「<TDL現役キャストが直言>意外?東京ディズニーリゾートの従業員不足が死亡事故の原因」(http://mediagong.jp/?p=13033)という記事に対するリアクションである。

以下の投書はメールではなく、編集部宛に封書で届いたいわゆる「タレコミ」に類する書面である。この投書をどう判断するかは読者にお任せするとして、非常に長文の書面であったため、3回に分けて全文掲載したい。

***<以下、投書(その1)>***

先日、東京ディズニーシーで起こった死亡事故ならびに人手不足についての当サイトを拝見させていただき、失礼を覚悟でお便りを書いている次第です。

記事によると、事故の原因の一つが人手不足であると掲載されておりましたが、おっしゃる通りだと思っております。ただ私が今回、どうしてもお伝えしたい内容は、人手不足以上に別の原因があるという事です。

単刀直入に結論から申しますと、弊社における、従業員、主にアルバイトに対する企業体質、人事制度に大きな問題があると言えます。今、問題になっているブラック企業、またはブラックアルバイトと少なからずとも関係がある話です。

現在弊社には正社員約2,000名、準社員(アルバイト)約20000名を主としてテーマパーク事業を母体として運営しております。その他、契約社員、嘱託社員をはじめとする非正規雇用も多数、さらには弊社の子会社、関連会社を含めた複数の会社がテーマパーク、商業施設(イクスピアリ他)、ホテルなどを運営に携わっています。

その中で、圧倒的な人数を占める非正規社員である「準社員=キャスト」(アルバイト)に対する会社としての扱いに私は疑問を持っています。一部上場企業として正規雇用された正社員は保障された給与や保険、福利厚生などが確保されており、ある意味会社に守られている環境で働いています。もちろん私もその内の一人です。しかし、広大なテーマパークなどを運営するにあたりどうしても必要なのが、キャストをメインとする非正規社員です。

今までは、1つのテーマパーク(東京ディズニーランド)の運営で済んでいたのが、ホテル、ショッピングセンター、2つめのテーマパーク(東京ディズニーシー/以下TDS)の運営など、同じ舞浜地区で事業拡大を図ったため、御社の記事通り、人員確保が難しい状況に陥っております。

昔は若い学生たちがテーマパークの表舞台に立っていた印象があるかと思いますが、現在、高齢者を含めたさまざまな年代の従業員がテーマパークで働いています。人員確保が難しくなったので、年齢の幅を広げた採用を始めた結果です。こういった雇用確保への取り組みは何も問題ないかと思いますが、雇用してからのキャスト全体の扱いに問題があると考えています。

まずは、大まかな準社員の人事制度からご説明します。(※下記の人事制度は弊社(株)オリエンタルランドの準社員に当てがわれたもので、子会社・関連会社の制度はとは異なる場合がございます)

準社員は入社時、一番下のランク「Mキャスト」と呼ばれるステータスで勤務をスタートします。その後、勤務日数を重ね、評価を得るうちに、MキャストからAキャスト、Gキャスト、Iキャスト、Cキャストと順にステップアップする人事制度を設けています。

お分かりの通り、綴りを並べると「MAGIC」になります。M、A、Gキャストは、勤務日数をこなすと自動的に昇格する程度のステータスです。Iは新人キャストにトレーニングできる資格を持つ、いわゆる「トレーナー」、Cはさらに各ロケーション長をサポートできるくらいの資格になり、IとCの給与はM、A、G(基本時給1,000円)にくらべ、若干高い設定です。とはいえ、時給が高くなるというよりは、年2回のボーナスが付与される程度です。

どんなにシフトに入って、専業キャスト(土日を含む週5日勤務)として働いても、M、A、Gキャストの年収は200万円以下、I、Cキャストは良くて250万円程度の低水準なのです。

その上、オンステージ勤務者(テーマパーク内の表舞台で働く従業員)は、パークの混雑具合によって、スローな日や時間帯には「勤務解消」と呼ばれる、いわば(強制)退社を命じられることもあります。(※ロケーション、状況によっては強制ではありません)勤務解消の場合、解消時間に対する約半額の給与が支払われます。

働かずして半額の給与をもらえることを喜び、快く帰宅するキャストもいますが、中には専業で働いているキャストも大勢いるため、生活がかかっているので、帰りたくない者もいます。しかし、会社としては、人員削減を行うことを絶対としているため、その日の予算を下回る売り上げや入場者数の場合は、がっつり勤務解消を試みます。

ロケーション長としては、「人員削減すること=的確な予算管理」によって自分への評価につながりますので、無理にでもキャストを帰宅させる方向性になります。さらに、冬などのスローシーズン期間中は、勤務自体に入ることができないキャストも大勢発生します。

そうすると、弊社で生計を立てている専業キャストにとっては頭が痛いのです。ただでさえ、時給が低い上に、「勤務させてもらえない=お金がもらえない」という循環に陥ってしまい、生活できず、もう一つ掛け持ちでアルバイトを始めるキャストもいれば、あきらめて辞めるキャストも大勢います。

オンステージ勤務者のM、A、Gキャストは頑張って評価してもらい、I、Cキャストを目指す人もいますが、枠に限りがあるので、そう簡単になれません。仮にI、Cキャストになれたとしても給与が低い状態は変わらず、生活水準を上げることができるわけではありません。

そしてなによりも、全キャスト(準社員)は正社員にステージアップする制度がありません。準社員で雇われたら、一生準社員のままです。ごく稀に社内公募などの採用がありますが、年に数名程度の採用です。どんなに頑張っても、それ相当の評価がなく、モチベーションが下がってしまうのが現状です。

それゆえに離職率が高いわけです。いくら人員をかき集めても、職場環境が悪いので、退職してしまう。人手不足が原因だと弊社は言い訳しますが、環境(人事制度)を変える気がなく、安月給でアルバイトを働かせ、パークを運営させたい一心なので、雇用が確保できない、という最悪の循環になっています。

 

***<その2に続く>***

 

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メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。