NHK「マッサン」ヒロインのエリーがブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」の舞台へ


熊谷信也[新赤坂BLITZ初代支配人]

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シャーロット・ケイト・フォックスがニューヨークのブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」の舞台に立った。舞台が開けて1週間目をアンバサダー劇場で観劇した。

そもそもアメリカ人であるから英語のセリフに問題はない。むしろ日本語よりも生き生きと舞台のロキシー・ハートを演じている。歌の安定感、踊りも多少の緊張感は伝わるものの、観客は笑い、歓声をあげこのシャーロットの「シカゴ」を楽しんでいる。

NHK朝の国民的健康連続テレビ小説「マッサン」から打って変わって「シカゴ」では夫殺しの悪役、良妻から殺人犯へ、キュートでセクシーな悪役スターとなる。こんなに離れた役ができるということは役者冥利につきるだろう。

さすがは19年の歴史を誇る「シカゴ」。グイグイとストーリーに引き込んで行く。日本公演ではおなじみのヴェルマ・ケリー役のアムラ=フェイ・ライトは圧巻の存在感で押してくる。

弁護士ビリー・フリンののびのびとした歌はもうすばらいいとしか言いようがない。女性看守ママ・モートンも笑いとアクの強さで歌を楽しませてくれる。シャーロットの夫エイモスは滑稽で憐憫の情を引き出させてくれる。

全員一丸となって舞台を支えている。シャーロットの小粋な芝居がいい。1幕後半の「Best friends」ではアムラとの印象的なデュエットで華を咲かせている。

「マッサン」のエリー役のシャーロットの人生はまさに「マッサン」の中でのセリフ同様「人生とは冒険でしょう」ということに尽きるかもしれない。「マッサン」のビデオオーディション&面接を通して全く日本語を話さない、いや話せないニューメキシコ州出身のアメリカ人がエリー役に大抜擢され大ヒットの朝ドラとなったのだから。

NHKでは外国人主役はシャーロットが初めてと聞く。快挙であった。大ヒットであった。原作となるウイスキーメイカーはウイスキーが売れに売れ大ウイスキーブームとなった。

もちろん、脚本、演出、キャスティングが見事なのは言うまでもない。日本中が魅せられた。私だって人生で初めて一回も欠かすことなく全150話の「朝ドラ」を見た。

日本のドラマの成功がなければ今回のブロードウエィ・ミュージカル「シカゴ」ロキシー・ハート役は射止められなかった。なぜなら日本からブロードウエィ側への推薦だったから。

東洋で日本語のセリフを覚え努力を重ねたことが自分の国の、ましてやミュージカルの本場ブロードウェイに繋がるとは本人ですら想像できなかっただろう。「人生は冒険の連続でしょう」神様は一人の女性に何度も冒険を与えるものなのか。

このシャーロットのブロードウエィ公演が開幕して裏話を聞いた。「シカゴ」ブロードウエィの大物プロデューサー、バリー・ワイズラー氏がシャーロットの初日を見て「予定の2週間公演を、もう1週間伸ばしても良い」と言ったと言うのだ。

まずはプロデューサーのおメガネに叶ったのだ。その後のテレビドラマ、映画の仕事のため残念ながら、シャーロット側はそれを断らざるを得なかったと。

開幕して1週間後の11月6日金曜夜公演は、二階席一番後ろまで満員御礼。一階は左右に立ち見まで出る盛況ぶり。

筆者の隣の客は笑い泣き、惜しみなく積極的な拍手をシャーロットに送っていた。友人同士で話している訛りを聞く限り多分イギリス人と思われる。シャーロットが日本の朝ドラで人気が出た「アメリカ人」だとは知らないだろう。

その出自を知らなくても楽しんでいる。客席は日本人が3割、残りはアメリカからあるいは海外からの観光客だろうと思う。日本凱旋公演が待ち遠しい。シャーロットの第二の故郷日本の老若男女はどんな思いでこの舞台を見るのだろうか。

日本の朝ドラのヒロイン「エリー」はニューヨークでインターナショナルな存在としての「ロキシー」へと変身をとげている。

シャーロット・ケイト・フォックス。彼女の冒険はまだまだ止まらない。

 

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熊谷 信也

熊谷信也(くまがいしんや)1960年、TBS入社。 新赤坂BLITZ初代支配人。ディレクター、 プロデューサーを経て現在、事業局でイベントのプロデュース。 演劇、海外招聘をジャンルを問わず様々な作品とかかわる。 最近の作品に堀北真希、上川隆也出演、舞台「9days Queen」。 漫画原作をテレビドラマと舞台化した「ぶっせん」がある。