[茂木健一郎]<政権交代は政治家にとって学びのサイクル>政権を「6年毎にかわりばんこ」や「くじ引き」で決めることも一案


茂木健一郎[脳科学者]

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政治的な立場には、いろいろある。どんな見解でも、人々の意見をすべて反映しているわけでも、社会問題をすべて把握しているわけではない。だからこそ、議会制民主主義は、複数の勢力の間で政権交代が起こることで新陳代謝が起こる。

アメリカ大統領選挙は、少数の例外をのぞいて、ほぼ8年毎に共和党と民主党が勝利している。英国でも、保守党と労働党が政権交代してきた。このように、政権を担う勢力が交代することが、議会制民主主義における不可欠な「新陳代謝」となる。

政権交代は、政治家にとっても重要な学びのサイクルになる。与党になると、それほど冒険的な政策はとれない。急進的な主張をしていた人たちが政権をとると穏健になることはよくある。

一方、野党は、政権運営の直接の重責から解放され、いわば岡目八目で政策を精査することができる。政治家が、与党と野党の立場を交互に経験することには、以上のようなメリットがある。野党として醸成される能力と、与党として醸成される能力は異なる。

それらを一定のリズムで交代して経験することで、政治家としての能力が高まっていく。通常、議会制民主主義は、その時々の民意を反映した勢力が政権をとるべきだというもっともな理屈の上に成立している。

しかし、以上のような見方をすると、政権交代が定期的に繰り返されることにメリットがある。

極論すれば、たとえば6年毎にかわりばんこにやったり、くじ引きでもいいくらいだ。もちろん、通常の議会制民主主義の手続きで、それぞれが主張をし合い、選挙で結果として政権交代が一定のリズムで起きることが望ましい。

実際、民主主義が機能している多くの国では、そのような政治のバイオリズムのようなことが実現している。蓋然性としては政権交代が起こり得るにもかかわらず、実際には一つの政党が長期にわたって政権を担う(あるいは担う見込みとされる)国は、政党の政策の出し方や、党首の選び方、有権者の意識、政治文化のどこかに課題があるといえるだろう。

政権交代のリアルな可能性のない民主主義は不完全である。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。