[茂木健一郎]「You Ain’t No Muslim, Bruv!(君のやっていることは、イスラム教徒の振る舞いじゃない!)」は心の叫び


茂木健一郎[脳科学者]

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先日、ロンドンの地下鉄で、複数の人が刃物で刺されて負傷するテロ事件があった。

犯人は、「This is for Syria」と叫んでいたとされる。それに対して、通行人の一人が、

「You Ain’t No Muslim, Bruv!」

と呼応したことが称賛されている。「You Ain’t No Muslim, Bruv! :君のやっていることは、イスラム教徒の振る舞いじゃない!」とでも訳せるこの言葉(中学などで翻訳の練習に使ってもいいかもしれない)、キャメロン首相を始めとして、多くの人が称賛した。

「You Ain’t No Muslim, Bruv! 」は、最近見られるイスラムを名乗るテロリストたちの行為が、宗教としてのイスラムを代表するものではないという本質を、簡潔に指摘している。テロを行う者の欺瞞を、的確に衝いているところが人々の心をつかんだ理由だろう。

さらに、この言葉が人々の琴線に触れたのは、あらかじめ準備された言葉ではなく、テロの現場という、緊迫した現場でとっさに出た言葉だったからであろう。とっさに出た言葉は、その人の心の中の真実を露わにする。

いわば、無意識からの手紙である。イデオロギーや価値観は、時に人の心を厚化粧にする。二重にも三重にも塗り固められ、真実の心の声が何なのか、本人にもわからなくなる。

そんな時代に、緊迫した状況での「心の叫び」にこめられた真実に、多くの人が救われた思いになったのだろう。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。