<過去ネタとのカブりばかり?>「FNSお笑い祭」の全18芸人・全ネタを個別批評


高橋維新[弁護士]

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MCにダウンタウンを迎えて放送された2015年12月28日フジテレビ「FNSお笑い祭」。番組全体の批評に関しては、別稿(http://mediagong.jp/?p=14216)で既に言及したので、本記事では、放送された芸人のたちの、各ネタについて講評してみたい。

全体としては、過去のネタとかぶっているものが多かった。今年の賞レースやフジのネタ番組でやっていたものさえも混じっていた。

スタッフは新ネタをやれと厳命すべきではないだろうか。もちろん、スベる危険はあるのだが、それこそスタッフが事前に見て改善していけばよい。それぐらいのことはやってやらないと、スタッフがいる意味がない。

1.博多華丸・大吉

筆者はあまり好みではないが、基本的にあまり他人の悪口を言わないので、安心して見ていられる部分はある。

2.陣内智則

ピン芸の皮をかぶった漫才である。ボケを事前に用意しておき、それに対して陣内が生でツッコむというスタイルである。

ただ、漫才としては基本的にボケとツッコミの1セットを一つずつ積み重ねていくだけの「足し算の漫才」に過ぎないため、もっと練ってほしいところである。陣内には、同じ種類のボケ(今回だと「アルマゲドン」)を何度も繰り返すという天丼のくだりにしか足し算を解消しようという試みが見られないので、もっと前後の絡みを加えてほしい。

あとはまあ、機械がしゃべっている最中の陣内の発言が少しうるさすぎる印象があった。

今回のは、「映画館で上映前にやる映画の予告にこんなのがあったらイヤだ」というネタだった。例えば、「『私の頭の中の消しゴム』と『アルマゲドン』を合体させた」という触れ込みの映画の予告が流れる。陣内はその最中に「それは絶対面白いやろ」みたいな発言を重ねたあとに、「タイトルが『私の頭の中マゲドン』である」というオチが来る。

陣内のこの発言は、「おもしろい映画を合体させることで、おもしろい映画ができているはずなのに、タイトルがひどい」というズレを際立たせるためのフリである。ただ、映画の予告編というものが出すそれっぽい雰囲気は、それだけで見ている方にちゃんとした内容を期待させるので、フリとしてはこの「雰囲気」だけで十分である。陣内の発言は、余計であるし、映画館で映画を見ている設定なのにベラベラしゃべることでリアリティを失わせる要因にもなっている。

あとは、せっかく映画館のシチュエーションなので、予告編の映像のクオリティはもっと上げた方がリアリティも出るしフリとしても良いものになるだろう。そこにこだわり始めると際限なく金がかかりそうではあるが。

3.とにかく明るい安村

R-1での評(http://mediagong.jp/?p=8020)に書いた通り。筆者はもう飽きているが、「安心してください。はいてますよ」といった時に少ししか笑いが起きないのは客も飽き始めている証拠である。

あと全裸ポーズも、基本的に

①前に持ってきたどちらかの足の太ももでパンツを隠す

②前屈みになって上体でパンツを隠す

③正面を向いた体育座り

の3通りとその細かいバリエーションしかない気がするので、もう時間の問題である。「●倍速でやる」という変化の試み自体はいいのだが、マイナーチェンジの域を出ていない。

4.オードリー

ENGEIグランドスラムでの評(http://mediagong.jp/?p=9977)に書いた通りだが、オードリーの漫才は一種類しかない。それは、筆者の理論から分析的に説明すると、ボケがもたらすズレが基本的に「春日がヘタクソ」という一種類しかないからである。

オードリーの漫才が提供するズレは、春日が変な間でツッコミを入れるか、流れを読めていない発言をするかのどちらかであり、ずっとこの一本調子なのである。だから、何を見ても同じような感想になるのである。

もう無理して漫才をやらなくてもいいのになあ。

5.おかずクラブ

ネタとは関係ないが、ゆいPはフリートーク中に浜田から「ブタ」と言われてキレられていなかったのがダメである。春菜は同じフリにきちんと即応できている。

ネタは、普通の芝居である。これがおもしろいのは、2人とも強烈なフラを持っているからである。ブサイクが自信満々に綺麗な女王様を演じているからおもしろいのであるが、提供されるズレはずっとその一種類なので、何とかしないとすぐ飽きられるだろう。

ただまあ2人とも演技力はかなりのレベルに達していると思うので、他の仕事は来るかもしれない。

6.ウーマンラッシュアワー

THE MANZAIかどこかで見たことあるネタ。なんでおもしろくないんだろうなあ。多分好みの問題だろうなあ。

7.トレンディエンジェル

いつものトレンディエンジェル。何度でも同じことを言うが、売れ続けるならハゲネタから離れた方がいいと思う。これだけハゲネタで売れてしまうと離陸のタイミングもすごく難しいのだが。

8.厚切りジェイソン

いつもの漢字ネタである。

改めて思ったが、間がすごくちゃんとしているのは非常に良い。ただ、「外」と「多」を紹介するところはもっとテンポよくやっていいと思う。なんちゅうか、英語通訳として日本のお笑いに貢献してくれればいいと思う。

9.コロコロチキチキペッパーズ

キングオブコント2015(http://mediagong.jp/?p=12738)の決勝ネタなので評価はそちらに譲る。基本的に「さあ」と「くれーい」の動きをずっとやっているだけだから、1回目はいいとしてもこれを見てずっと笑っていられる人の気が知れない。

「ずっと同じボケをやり続ける」というのはシュールなネタとしてはあり得るのだが、心あるプロだったらネタを思いついた後に「自分はこのネタをこれ以上練りたくないから、他のボケを考えたくないからサボっているだけではないだろうか」って自問自答するもんだと思うのだが。

10.ナイツ

いつものスタイルではなく、土屋がボケて塙がツッコむという形で始まり、何かのフリかと思ったらそのまま最後まで突っ走ってしまった。

フリートークでも話題にされていたが、塙はいつもスタイルには飽き気味のようである。新しい試みは、試みとしては買うが、今回のはいつものスタイルは越えられていなかったのでボツである。

11.サンドウィッチマン

いつもの足し算の漫才。

12.スピードワゴン

小沢が再現するシチュエーションに井戸田がツッコむスタイル。井戸田が途中で小沢のシチュエーションに入ってきたのは良かったが、それだけである。

なんというか、小沢は放置して失笑して楽しむものだと思うので、今回の井戸田のように大学生みたいな普通のツッコミを入れてしまうとこちらに悪寒が走る。もっと冷たくあしらうような感じでツッコんだ方がいいと思う。

13.ハリセンボン

ハリセンボンは、ネタはおもしろくないので、フリートークで頑張ってください。なぜネタがおもしろくないかを鑑みるに、結局は個々のボケの質の問題に帰着するのですが、要はそれがおもしろくないということです。言い換えれば、大喜利力の絶対量が2人とも足りないのです。

ネタ後半は春菜イジりが主でしたが、それこそアドリブでやるべきものです。ネタでやられても、クオリティが普段アドリブで春菜をイジる他の芸人に勝てていないので、「事前に考えているはずなのに負けてるな」という感想になってしまいます。

14.東京03

よくやっているネタ。これ自体は筆者にはあまりハマらない。

15.千鳥

THE MANZAIでやっていたような電話での会話ネタ。これも筆者にはあまりハマらないが、やはり個々のボケの質、すなわち大喜利力の問題だと思われる。「紅ズワイガニ エビ美」ですよ。90年代の小学生の発想だと思いませんか。

16.ハライチ

ハライチの古典的なスタイル。岩井が短い言葉でフッて、澤部がノるという奴である。澤部は、ノる時には岩井が言った言葉と同じ言葉を使わない方がいいと思う。

岩井が「イグアナはキープ」といったら、「イグアナ」とも「キープ」とも言わずに再現をするのである。

これを言ってしまうと、客がもう知っているような情報をわざわざ伝えて、笑いの芽をつぶしてしまうことになるからである。沢田研二のモノマネをするときに「こんにちは沢田研二です」と言うようなものである。もっと違う角度を提供すれば、客に新鮮さを与えることができる。

17.バカリズム

筆者はむしろ女神に感情移入してしまい、口達者なクレーマーに反論できない女神が可愛そうになって笑えなかったが、個人差だろう。

18.ロバート

ENGEIグランドスラム(http://mediagong.jp/?p=12302)でやっていたものなのでそちらに譲る。

 

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。