スター・ウォーズの新作は「フォースの覚醒」よりも旧三部作のリメイクが先決だ


高橋維新[弁護士]

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(以下、「Ep7」という)を見た。

「スター・ウォーズ」の全体構想の中で、本作は「新々三部作」(レイ三部作)の一作目である。すなわちいま本作の感想を書くのは、3時間ドラマを1時間しか見ていない状態で感想を書くようなものであって、必ずしも適切ではない部分もあるだろう。

しかしながら、本作も金をとって客を入れている以上、一つの作品としておもしろいものに仕上げておかねばならないはずであるし、批評も受けねばならないはずである。そこで、全体のお話がまだ完結していないという点はあまり気にせずに論評を記したい。

筆者が今までに公開されたスター・ウォーズの主要劇場版シリーズの中で、一番好きなのはエピソード1の『ファントム・メナス』(以下、「Ep1」という)である。

「スター・ウォーズ」がウケたのは、主人公の一行が強大な悪の帝国を倒すという王道のストーリーに、親子の相克という感動の小噺が絡み、銀河規模の宇宙戦争という形で展開されるこの王道のストーリーをしっかりとした技術で再現しきったからである。

とはいえ、Ep4からEp6までのいわゆる「旧三部作」は、当初の公開年が1977年から1983年までで、いま見るとどうしてもクオリティ的に色々と見劣りする部分があるのは否めない。これは、愛でカバーできるレベルを遙かに超えている。

その後公開されたEp1からEp3までの「新三部作」は、公開年が1999年から2005年までであり、一応いま見ても安心できるクオリティが維持されている。しかしこの新三部作は、要はアナキンがダース・ヴェイダーに堕ちていき、共和国が帝国に支配されていくまでの過程を描いた内容になっているため、話が進むにつれてどんどん雰囲気が暗くなっていく。

その中だと、一応はハッピーエンドで終わるEp1がまだ見ていて色々と爽快なのである。

Ep1のメインテーマは帝国がけしかけた尖兵とジェダイとの小競り合いであり、帝国の陰もまだそこまで濃くなってはいない。Ep1は一応その小競り合いが終息する形で話が幕を閉じるので、見ている方も安堵できるのである。アナキンもまだまだ純朴な少年で、一時的ではあれ未来に希望を抱くことができる。

帝国との戦争に終止符が打たれるのはその後のEp6であり、ストーリー的なカタルシスはこのEp6が一番大きいのであるが、前述の通り映像のクオリティが大したことない。新三部作と旧三部作は、映像のクオリティをとるか、話の明るさをとるかという二者択一を見る者に迫ってきているのである。

そして、ここへ来てEp6のその後を描くEp7である。技術は、無論申し分ない。あとは話の中身なのだが、結局三部作の一作目なのでまだ始まったばかりであり、カタルシスもへったくれもないというのが正直なところである。

Ep7は、今後主人公になっていくレイがレイア達に引き取られるまでが話の中心になっており、画面上で描かれる戦闘もEp1以上に小さな小競り合いが中心である。

最後の最後にレイア率いるレジスタンスと帝国の残党で組織されたファースト・オーダーの全面的な戦闘があるのだが、出てくる戦闘機の数や飛び交う弾薬の数は全体的に少なく、何か出し惜しみや手抜きをしているように感じてしまった。大きな組織同士の戦いという感じをあまり受けなかったのである。

Ep1が見ていて楽しかったのは、(地上戦ではあるが)通商連合とグンガンの大規模な戦いが描かれていたというのも理由の一つである。Ep7も、もっと双方の物量を感じさせる描写にした方が単純にこちらの興奮も増しただろう。

当然ながら、画面上に登場する戦闘機や弾薬の量を増やすと、映像を作る手間も等比級数的に増していくので、大変ではあるのだが、サボってはいかんところだろう。

あとEp7には、これまでの6作を通して描かれてきたもう一つのテーマである「親子の相克」も、ハン・ソロとカイロ・レンの戦いという形で描かれている。ただ、カイロ・レンがなぜダークサイドに堕ちてしまったかはきちんと描かれておらず、見ている方には分からないうえに、フォースが「覚醒」したばかりのレイやフォースを持ってすらいないフィンにもトドメをさしきれないカイロ・レンはダース・ヴェイダーと比べてもどことなく小者臭が抜けないため、この描写自体とって付けたものであるというような印象は拭えない。

カイロ・レンが堕ちる過程は他のスピンオフで描かれているのかもしれないが、こちらは映画を見に来ているのだから、「スピンオフを(追加のお金を払って)見てね」という話で済むものではないだろう。

それと、毎回毎回たった数人に突破されてしまう帝国の警戒網が心配にはなるのだが、ここはこのシリーズのお約束といったところなので、どれだけ不自然に感じるかは個人差のある部分である。ぐっと飲み込んだ方が話に没入できるのも確かである。

総合的には、筆者の中にあるEp1を超えられてはいなかった。とはいえ、Ep8やEp9が心配になるほどひどい出来だというわけでもないので、今後に期待である。

ただ、このレイ三部作は、最後まで描いても所詮帝国軍の「残党」と決着がつくだけなので、どうにも話の規模が小さくなった感は否めない。親玉のスノークも、今作に初めて登場したぽっと出であって正体がよく分からないので、大物感は全く出ていない(こいつもスピンオフには出てきているのかもしれないが、それを見てねという話で済まないのはカイロ・レンと同じである)。

それならば、帝国そのものや、ダース・シディアスやダース・ヴェイダーといった大物と決着がつき、ストーリー的なカタルシスも極大を迎えるEp4からEp6までをリメイクした方がいいものができたかもしれない。

筆者はまずそっちが先決だと思っているが。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。