<「開運!なんでも鑑定団」でパワハラ?>テレビ東京が石坂浩二に尊敬の念を払わない非礼


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

***

「テレビ東京が石坂浩二にパワハラ」というニュース。何のことかと思ったら「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京)の司会者である石坂浩二の発言部分のほとんどが、編集でカット(削除)されているということであった。

この行為は、司会に今田耕司が加わってから2年も続いているという。もちろん、そんなことはない。量の多寡はあるが、石坂さんの発言を編集でカットする行為は司会が島田紳助だった頃から続いている慣行である。

なぜか。知るためには、番組開始の当初にさかのぼってみる必要がある。

1994年(平成6年)に始まった「開運!なんでも鑑定団」は、イギリス・BBCで放送されている「Antiques Roadshow」という一般人のお宝を鑑定士が鑑定する番組が原型である。

さらに言えば、島田紳助が過去に司会をしていた深夜番組「EXテレビ」(大阪版・読売テレビ)の一企画として放送した「家宝鑑定ショー」もルーツでもある。

テレビ東京での番組化にあたって、参考にされたキャスティングは「平成教育委員会」(フジテレビ・1991〜)である。逸見政孝とビートたけしが組んだこの番組は大ヒットし、大物司会者と芸人の組み合わせが、当時の流行となった。この利点はビートたけしのような芸人が進行に気を遣うことなく、自由に暴れ回れることにある。

現在の番組で言えば「ニュースキャスター」(TBS)。安住紳一郎アナとビートたけしの組み合わせである。ただし、この番組での安住アナはビートたけしを自由に暴れ回らせるのではなく、危ない発言を未然に打ち切るトークテクニックを使っている。

島田紳助を司会に起用するにあたって、逸見政孝になぞらえられたのが石坂浩二である。石坂浩二は博覧強記で、プロ級の画家でもあり、うってつけだと思ったのだろう。しかし、ただひとつ誤算があった。

それは紳助の司会方法である。島田紳助は仕切りながら笑いもとる方法で司会をする。このとき、他の誰かが口を挟むと、リズムが崩れる。

紳助はそれを極端に嫌う芸人である。石坂浩二を鑑定士側につけるなどの工夫が必要だったし、現場はそれをやってもみたのだろう。でも、うまくいかなかった。

それでも、番組はヒットした。企画がよかったのであろう。骨太の筋の通った企画だったのだ。だから、長続きした。長続きしたから、だんだん石坂の発言チャンスが編集カットされていることが目立ってきたというわけだ。

そして、進助が芸能界を引退した。そのポジションは、今田耕司に代わった。今田になってから番組は見やすくなったように思う。紳助が鑑定以外の部分に自分のおしゃべりをいれて面白くしていたのにたいし、今田は鑑定だけに完全にスポットを当てる司会をしたからだ。企画の根幹を実践した結果、石坂の発言はますます必要がなくなってしまったのかも知れない。

そこに飛び込んできたのが「テレビ東京が石坂浩二にパワハラ」のニュースだ。1月29日付のスポニチによれば、テレビ東京は石坂に低視聴率による番組降板を打診し、対立しているという。さらに、こんなことも書いてある。

「本誌の取材では、話し合いの中で局側は石坂から『少なからぬ出演料を頂いている。それが負担なら大幅に減らしてもらってもいい』と提案を受けた」

局は、その提案に応じなかったのである。「ギャラを少なくしてもいい」という提案をさせるぐらい石坂さんを追い詰めたのは、テレビ局の横暴である。

テレビにお金がなくなっているのは今や、タレントも含め誰でも知っている。それでも高額のギャラを主張する芸能人がいる中でこの提案はマネジャーを通した形だとしても、相当な覚悟とギャラの額という自尊心を傷つける覚悟で行われたはずである。それなのに、だ。これは石坂さんに失礼である。非礼である。

 

 

筆者の知る石坂浩二はアイディアマンである。番組にいろんな提案を言ってくれる。筆者も大いに助けられた。もちろん受け入れられない提案もあるが、そんなときは石坂さんの他の仕事場やアトリエに通って話し込む。そして理解してくれる。石坂浩二とはそんな人だ。

一時期、「水戸黄門」(TBS)の黄門様を石坂さんが演ったことがあった。その過程で、石坂さんが「白いあごひげのない黄門」を演じたいと言う話が伝わってきた。「あごひげなしの黄門」というのを聞いた時、筆者は「石坂さんらしい提案だ」と思った。確かに、史実の徳川光圀(水戸黄門)に「あごひげ」はないからだ。

もちろん、「水戸黄門」のスタッフは百万言を重ねても石坂さんを説得し、これを阻止しなければならないとも思ったはずだ。結局、石坂さんは「新しい黄門様」と交替した。

しかし、「開運!なんでも鑑定団」のスタッフはきちんと石坂さんと言葉を交わしたのだろうか。テレビ東京の社長会見も非礼に輪を掛けているように思う。テレビ東京の高橋雄一社長(64)は次のように発言した。

「(「なんでも鑑定団」は)ウチの中で一番(視聴率)を稼いでいる番組。そのロジック(視聴率不振が理由の石坂降板)はない」

出演者に関することは基本的に現場と編成局の判断だが、石坂さんの降板などと言った重要事項は絶対にトップに伝えるはずである。髙橋雄一氏は日本経済新聞社米州総局長などを経て、テレビ東京代表取締役社長としてやって来た人物だ。

テレ東のトップは日経からやって来る。なんでも鑑定団のファンは無視される。

少なくても筆者自身は「開運!なんでも鑑定団」を、もう見ない。

 

【あわせて読みたい】