<「クールジャパン」をどう見る>「東京ガールズコレクション」創業者・大浜史太郎氏×kitsonプロデューサー・椿谷真理子氏


藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]

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急激に増加する訪日外国人観光客。都市部や観光地を中心に、外国人観光客と思しき人たちの存在が目に見えて増えてきたと感じる機会は多い。

2020年の東京五輪を控え、ジャパン・ブランディングに向けて、「クールジャパン」など、訪日外国人を増やすためのさまざまな政府政策が繰り出されている。近年の外国人観光客の増加によって、その「成果」は評価され得る一方で、厳しい意見も多い。

歌手のGACKTがクールジャパン戦略について、「無駄な税金がただよくわからない企業に流れるだけといった、負のループに陥っている」と私見を述べたことも話題となった。

本稿では、毎回3万人を動員するファッションイベント「東京ガールズコレクション」(以下、TGC)の仕掛人であり初代実行委員長として活躍した大浜史太郎氏と、LA発ブランドとして日本中に一大旋風を巻き起こしたファッションブランド「kitson」の元プロデューサー・椿谷真理子氏というブランディングの第一人者の二人に「ジャパン・ブランディング」について話を聞いた。[聞き手:藤本貴之(東洋大学准教授)]

***(以下、インタビュー)***

[藤本貴之(以下、藤本)]最近のクールジャパンなどの活動をどうご覧になっていますか。

[大浜史太郎(以下、大浜)]先ず初めに、僕が言いたいのは「クールジャパン」の方たちは十分にやっていると思う、ということです。むしろ、褒めてあげたいぐらい(笑)。「JETRO(日本貿易振興機構)」のホームページにある世界中の統計データやマーケティングレポートなどは本当に秀逸です。いつも参考にさせてもらってますよ。ただ、それ以上を期待してはいけません(笑)

[椿谷真理子(以下、椿谷)]確かに(笑)。いつの時代でも、その国のイメージを変革できる人なんてせいぜい数人から数十人の「インディビジュアル(個人)」なんですからね。

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(写真:ファッションプロデューサー・椿谷真理子氏)

 

[藤本]でも、クールジャパンのやり方に厳しい評価を述べる人も少なくありません。例えば、現代美術作家の村上隆氏などはクールジャパン否定派の急先鋒です。そう言えば、大浜さんはかつて、村上さんとコラボレーションをされていましたよね。

[大浜]村上隆さんは、世界で評価されている稀有な日本人です。もはや人間国宝級とも言える。けれど、視点によっては、彼の発言の半分は時代によって変わる「ポジショントーク」です。半分は正しいけど、半分は気にしないで切り捨てて良いかなと(笑)。そもそも、アートとは村上さんも言っているとおり世界のコンテクスト(歴史的文脈)の中にありますから。

[藤本]その意味では、時代によって有機的に変容するはずの「デザイン」であるにもかかわらず、日本のデザイン業界はなぜか今日のネット時代に最適化されずに、ずるずると19世紀、20世紀型の「モダン」を権威として存在させてしまっている。これが「五輪エンブレム問題」のような騒動を予想外に炎上させている要因の一つになっているようにも思います。

[大浜]あとは、歴史的コンテクストなんて「すべてが相対的なもの」と割り切ることも重要かもしれませんね。それぞれの視点があるのなら、クールジャパンだって、第三者の意見を気にせず自由にのびのびと勝手にやっていけば良いかと。

[椿谷]クールジャパンさんやJETROや外務省も日本の良さとは何かを再確認させてくれてるのは事実ですし、意識全体の底上げにとても寄与してくれていると思います。クリエイターとしては、「日本の良さとは何か?」とか、「世界で評価されているもの、そうでないもの」を再考するきっかけを提供してくれています。

[大浜]そういうところから、新しい日本ブランディングの可能性が生まれてくるわけです。

[藤本]椿谷さんと言えば、「kitson」の取締役を離れた後、ブランディングや様々なプロデュースを仕掛けてきました。現在は、日本の独自のデザインやコンテンツを、グローバルな手法で構築しようとしているそうですが、具体的にはどんなモノなのでしょうか?

[椿谷]教えません(笑)。まだ商標などの処理が完了していませんし。世界中にアイデア泥棒が溢れているので、公表まで、もうちょっとお待ち下さい(笑)

[大浜]椿谷さんのような優秀なプロデューサーは、危機管理能力が高いわけですね(笑)

[椿谷]世界中を見渡して、どう日本の「和」のイメージをブランドアイコンにして発信しようかと開発中です。これまで海外を見て回ることが多かったのですが、海外へ行けば行くほど日本の美や「和」を発信したいという気持ちが高まりました。そういう流れでブランド開発を進めています。問い合わせは多いのですが、やはりビジネスパートナー以外には、最終段階までは具体的なことは言えませんね(笑)。

[大浜]プロデューサーとしては、鉄壁の優秀さですね(笑)。

[椿谷]日本の美や「和」というスローな魅力を持つコンテンツを、ITやネットをフルに活用して消費者に届ける、ユーザーと共有する、という形でスピード感あるビジネスとして構築することが目下の課題です。そして、それこそが今の世代、今の時代に、世界に日本の魅力を届ける、もっとも効果的なジャパン・ブランディングだと思っています。むしろ、唯一じゃないかな。

***(以上、インタビュー)***

2020年の東京オリンピックやクールジャパンなど、にわかに盛り上がりを見せるジャパンブランディングの動きだが、一般国民には、なかなかその「魅力的」が伝わってこないのが実情。もちろん、批判や後ろ向きな指摘も多いが、それらに的を得ているものが少ないないのも事実。

一方で、「&TOKYO」などを見ればわかるように、官製ブランディングにはどうしても「お役所仕事」的な「じゃない感」が漂う。しかしながら批判することは容易だが、前向きに考えることも重要だ。むしろ「毎度お馴染みの文化人」と「ありがち日本コンテンツ」ばかりを起用する方法論ではなく、よりリアルな民間の活力、現実的な民間の実績を積極的に活用することが急務かもしれない。

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『だからデザイナーは炎上する(中央公論新社)』『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。