テレビ局のマーケティングについて考える


メディアゴン編集部

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テレビ局にもマーケティングの部署があり、視聴率の調査(どこでCMを入れれば視聴率が維持できるかなども含めて)、視聴者アンケート、グループインタビューなど、色々やっている。しかし、使い方が下手なのだろうか、マーケティングで良い思いをした経験がないという業界関係者は少なくない。

そこでこの際、マーケティングを少々学んみようと思い至り、とある大学の大学院が開催した23時間に渡るマーケティングに関する連続講義を受講してみた。もちろん、わずか23時間の連続を講義を聞いた程度で、本当に理解できているはずもないが、それでも、素人ながらに感得できた(と思った)こともあった。

まず、「マーケティングは過去のことだ。現場のもの作りは未来のことを考えている」と言う考え方がまちがいである、ということである。むしろ「マーケティングは過去から学んで、未来の儲け方を提案する」と言うことであると感じた。

マーケティングを定義しておく。現場のビジネスマンなら当たり前の知識かも知れないが、「マーケティングは、統計調査とイコールではない」。筆者なりの定義をすれば「企業や団体が持続可能になるための儲け方を考える戦略」だろうか。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」(日本マーケティング協会1990年)

なんとことやらよく分からない。具体性の乏しい記述だ。

【参考】<視聴率は統計か?それともマーケティングか?>ビデオリサーチ社は顧客のテレビ局にだけ視聴率を売るhttp://mediagong.jp/?p=7779

ところで、マーケティングの世界で、誰もが知っている高名な論文がある。1960年にセオドア・レビット教授が、「ハーバード・ビジネス・レビュー誌」の発表した「マーケティング近視眼」である。わかりやすくするために、(カッコ)の中にテレビ界を付け加えてみた。

「企業(テレビ局)が商品(番組)を販売(放送)するにあたって、その商品の(テレビの放送という)機能のみに着眼してしまうと、自らの使命を狭く定義することになり、そのような方法では競合や環境変化が起これば対応しきれない。レビットは『顧客は商品を買うのではない。その商品が提供するベネフィット(利益・利点)を購入しているのだ』と主張している。顧客は商品そのものを必要としてるのではなく、その商品によってもたらされる期待価値を得るために購入しているとして「顧客志向」という概念の重要性を広く知らしめた」

つまり、近視眼的マーケティングによる企業経営はその企業本体を危うくすると述べているのである。

「顧客は商品を買うのではない。その商品が提供するベネフィット(利益・利点)を購入しているのだ」

と言うことに関しては、わかりやすい例がある。

「電動ドリルを買う人は何を買うのか」

「ドリルが欲しいから買うのではない」

「穴が欲しいから買うのである」

この近視眼的マーケティングについて、セオドアはハリウッドの映画会社を例を挙げている。

「ハリウッドは自社を映画を製作する産業だと考えてしまった。そうではなく、映画をエンタテイメント産業と考えるべきだったのだ。テレビの出現を自分たちのチャンス、エンタテイメント産業をさらに飛躍させてくれるチャンスとして歓迎すべきだったのに、これを嘲笑し、拒否してしまった」

もちろんこれは1960年の話である。そして今日、ハリウッドの映画会社は自社を「エンタテイメント産業」と考えるべきだという提案を受け入れている。テーマパーク、グッズ販売、著作権ビジネス、ビデオゲーム、コマーシャル、小説、アニメーション、コミック。ハリウッドは持続可能になった。こうしたモデルは1977年の『スター・ウォーズ』で確立されたと言われる。

しかしその一方で、エンタテインメント産業となったハリウッドは、映画としての質を維持しているのだろうか。本物の「顧客志向」であるのだろうか。

翻って、日本のテレビのことを考える。

エンタテインメント産業となることが「顧客志向」なのか。面白い番組をつくることが「顧客志向」なのか。真実の調査報道をすることが「顧客志向」なのか。自社ビルの近くでイベントをすることが「顧客志向」なのか。土地活用をすることが「顧客志向」なのか。

簡単に答えは出そうにない。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。