<スポ根の舞台「弱虫ペダル」>「2.5次元ミュージカル」は少年漫画原作でも女性客ばかり?


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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「2.5次元ミュージカル」というものをご存知だろうか。漫画やアニメが原作で、それをキャラクター重視で(登場人物をできるだけそっくりにして)舞台化するものを指す。

通常のミュージカルと違う点は? と問われたら、「キャラ重視」ということだろうか。先日、はじめてその舞台「弱虫ペダル」をを見る機会があった。

会場に入ると、客層はほぼ100%女性(目につく範囲内に係員以外の男性を見つけられなかった)、年齢は10代から20代といったところか。原作の漫画「弱虫ペダル」は週刊少年チャンピオンに2008年から連載されている。

作者は渡部航。大ヒットした漫画なので、原作にせよ、アニメーションにせよ見たことのある人は多いかもしれない。少年漫画に典型的なスポ根もの(自転車競技部の青春!)。

ただし、ちょっとひねった設定なのは、主人公がアニメオタクのメガネ男子で、いかにもなスポーツマンの対極にあること。とはいえ、小学生のころから秋葉原にグッズを買いに遠路はるばるママチャリで往復することで鍛えられた並外れた脚力を持っている、という設定のニューヒーローである。

今回の舞台作品もインターハイでの劇的な優勝のあと、3年生を見送って新しいチームで次の優勝めざし再出発する様子を描いている。ライバルとの対決で自己の限界を超え殻をやぶりさらに強く・速くなることや、チームメイトとのチームビルディングや友情、選抜されないで涙を飲むチームメイトなどなど、スポーツものが好きなら男女問わずに楽しめる要素を兼ね備えている。

とはいえ、客席は若い女子ばかり。更にいうと舞台上は若い男子ばかり。チケットの入手ができず、グッズ販売にだけ会場を訪れるファンもいるが、ほぼ女性だけ。

少年漫画なのに不思議だが、この手の舞台作品はまず女性の比率が高い(男性は、よほどのことがないとミュージカルは見に来ない)。それに加えて、キャラを演じる男子はイケメン枠のアイドルと同じようになっており、観客の女子は特定のキャラクターのファンとなるようで、グッズなどもお目当てのキャラクターのグッズを集めるために会場周辺で交換会などが開かれていることも多い。

さて、本題の舞台はというと、キャラクターに髪型や体形まで似ている役者がでており、決め台詞や決めポーズも一緒。ポーズの度にスポットが「シャキーン」などという擬音とともに当たるのが笑えるが、簡易な舞台でありながら自転車レースのデッドヒートの様子を実に上手な工夫で表現している。

競技用自転車のハンドルだけをもった役者が足踏みをしたり走ったりすることで自転車の疾走を表現するのだが、これがよくできていて、違和感がない。個性あふれる自転車競技部の面々も、ライバル校の男子たちも、それなりにキャラクター設定がよくできており、この辺は原作がしっかりしているせいもあるだろう。

総じて自転車レースの動きを的確に3次元に落とし込む演出のうまさと、キャラクターの作りこみ方さえ間違えなければ、原作のファンである観客はすぐに作品の世界に入り込めるということだろうか。

ちなみに原作を読んでいない筆者でも登場人物同士の関係やレース展開、ストーリー展開が無理なくわかり楽しめた。役者の男のたちもよく走り動き飛び跳ね、歌を歌い、と相当の活動量である。舞台裏では本物のロードレース前後のように、役者たちはストレッチとクールダウンが必須だったようだが、ほとんど自転車競技と同じくらい動いているのでは、と思わされる。

見終わって、やはり腑に落ちなかったのは、これだけ男子受けする舞台でも男性がこないことだけだろうか。

 

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。