「東京ガールズコレクション」創業者・大浜史太郎氏がTGCを再買収した理由<独占インタビュー>


メディアゴン編集部

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日本最大級のファッションイベント「東京ガールズコレクション(以下、TGC)」。その創業者にして初代実行委員長として、TGC黄金期を牽引したファッションプロデューサー・大浜史太郎氏が、5月2日付をもって、海外28ヵ国での開催権利を買い戻したニュースが話題だ。

大浜氏が2010年にTGCの権利を売却し、運営を離れてから5年。これまで各方面からの多くの復帰要請を頑なに拒み続けた大浜氏が、満を持してTGC復帰の舞台として選んだのは海外28ヵ国だ。

【参考】<「東京ガールズコレクション」が海外進出>創業者・大浜史太郎氏がTGCの海外権利の大半を獲得

本稿では、TGCの権利の大半を買い戻した理由、TGCの現状、そして今後のTGCの海外展開について、大浜氏に独占インタビューを敢行した。

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—- 5月2日付けで、東京ガールズコレクションの海外28ヵ国もの多数の国での開催のマネジメント商標権利を買い戻したことを発表しました。その意図について教えてください。

[大浜史太郎(以下、大浜)]一番の理由は、TGCという自分が産んだ「子供」の可能性をもっと伸ばしてさらに成長させてあげたいという親心からです。海外でもっと変貌させたTGCを見せて可能性を広げてあげたいなと。まだまだ海外ではファッションイベントを見たことない女性は多いですし、もっと色んな可能性も広げてあげられるかなと思い始めました。

—- 現在、日本国内のTGCの権利は株式会社ディー・エル・イー(DLE)が展開しています。国内開催TGCとの違いを教えてください。

[大浜]今回我々は、台湾とヨーロッパを中心とした海外エリアの大半で開催していきます。とくに、ロンドン、アントワープ、パリ、デュッセルドルフ、ミラノなど・・・日本の文化に高い関心がある都市を中心に、さらにポリバレント(複数の役割)な役割でTGCの発展型を考えています。国内で開催されるTGCとは別々で、そこには明確な住み分けがあります。

—- そもそも、なぜTGCを売却したのですか?

[大浜]これはニュースにもなりましたが、2008年に僕が信頼していた財務責任者の横領事件がありました。それに起因してグループ全体の事業の撤退を余儀なくされました。その中で、色々検討した結果、TGCも売却しました。当時の株主やスタッフには、本当に申し訳なかったと思っています。今となっては、ドラマのような話ですが、信頼していた人に裏切られるというのは、やはり辛いものです。でもこの挫折は僕の人生のなかで本当に色々なことを学べましたし、ピンチをチャンスに、早めに人生の良いターニングポイントになって良かったと思ってます。

—- 今後、日本のTGCを買い戻す予定はあるのですか?

[大浜]それは全くありません。売却した当時のTGCは、誰に嫁がせても恥ずかしくない「完成された」形になっていたと僕も誇りに思っています。2年程前から何度か買い戻さないかとの話は来ていましたが、お断りしました。何故ならば、TGCは僕の「アートワーク」です。上手くいっているものを買い戻す意味もないですし、転売されてこそ、価値が高騰します。クリエイターは自分が売った絵や作品を買い集めませんよね、それと同じです。それに、そもそも国内と海外では「本質的な役割」が全く違います。

日本のTGCは「インバウンド」が目的です。一方で、今回展開する海外TGCは「デカダンスで、むしろオルタナティブ」な見せ方を目的とします。だから、国内展開と海外展開はそもそも存在意義も違うし、「ビジネスモデル」も完全に異なっています。

日本のTGCは既に成熟し、今のTGCには僕が連れてきた演出家や製作に関わるスタッフの方々の手によって安定して「今のスタイル」になったので、彼らがそのまま続けた方が良いとすぐに判断しました。

—- なぜ今、TGCの海外進出なのでしょうか?

[大浜]僕は「神戸コレクション」と「TGC」、そして「X Japan」のYoshikiさんとのコラボなどを手掛けてきました。自分自身、日本のファッション業界の発展にある程度は貢献できたし、もうやり残したことはないと思っています。ですから、厳密に言うと、海外のTGCは、手掛けたいから買ったのではなく、「全く違うアートワーク」に昇華させたい、というのが本音です。誰よりも日本のTGCを愛してますから、日本では二度と日本で同じことはやらないでしょう。

いつの時代でもTGCは僕が産んだ「作品」でもあることに変わりはないのですから、買って引き継いでくれる企業さんには心から感謝をしています。ずっと所有し続けてどんどん価値を上げて、また誰かに引き継いでいってもらえれば本望です。

一方、我々の海外のTGCは全く異なる「世界観」に進化する「新しい作品」になると思います。企画から演出やクリエイティブまですべて僕が英語で指示して、大幅にリファインさせて、誰も見たことのない仕様へ仕上げます。日本の製作スタッフさえ必要ありません。

—- 現在のTGCを見て、どのように感じていますか?

[大浜]現在の体制のTGCは、前回・前々回と見ましたが、正直言ってあのままでは厳しくなると思いました。せっかく現在の新しいオーナーを迎えたのですから、もっとTGCの伝統と価値を上げるための工夫をする必要があります。最近のファンが何を求めているのか、演出やランウェイなどのクリエイティブ面にもっと大規模な予算を割かないといけないのではないでしょうか。

例えば、日本のプロ野球の球団やサッカークラブも様々な企業が買収し、次世代の企業へ引き継がれてきました。地元やファンの意向を完全に無視して、好き勝手にやっていいわけでもありませんよね。設備投資をしたり、新たなサービスやコンテンツを提供します。

TGCのファンも同じです。野球やサッカーに比べるとファン層が少し曖昧ですが、コンセプトや伝統を無視は出来ないはずです。そのレガシーを受け継いでいきながら、どんどん新たな所有主が設備投資等をしてバリューを上げていって欲しいと思います。

【参考】<なぜ「炎上」は起きるのか>五輪エンブレム選考に見る「日本のデザイナーは勘違いで時代遅れ」

—- これからの国内TGCはどうなってゆくと思いますか?

[大浜]ファッションビジネスはGUCCIやルイ・ヴィトンの例を見ても分かるように、過去の経営危機や壮絶なスキャンダルまでもが、更なる「強烈なブランド」として光輝く要素になる非常に稀有なビジネスです。結果的にですが、TGCほど紆余曲折が話題になった存在は国内には他に例がないですし、皮肉にもその「圧」が日本のトップへ君臨させ続ける巨大なエネルギーとなる利点があるので、当面TGCの地位は揺るがないだろうと推測します。今後の「インバウンドの潜在力」も非常に大きいと思います。生みの親としては、果敢に攻める「娘」になって欲しいですね。

—- 最後に、国内には大浜さんに刺激を受けてたくさんのファッションショーやフォロワーが生まれました。しかし、先ほどのTGCへのお話を聞くと、厳しい指摘もお持ちです。今後、大浜さんのフォロワーたちはどうあるべきなのか。率直に聞かせてください。

[大浜]当初はJFW(東京コレクション)をプロリーグとするならば、TGCや神戸コレクションは甲子園のようなポジションにおさまれば良いと考えました。結果はご覧の通りです。TGCは国内で「モンスターイベント」としての名声を獲得できました。「怪物」なのですから、何かの面で常に極端に突出してなくてはいけません。果たして、これからのTGCはどんな面で周りを圧倒し続ける怪物でいるのか。それが重要です。

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名実ともに日本最大級のファッションイベントとなっている東京ガールズコレクションの海外進出。「黒船」となって東京湾を出港し海外を目指すTGCは、国内TGCとは一線も二線も画す戦略がある。

しかも、船長は鬼才・大浜史太郎氏だ。その目論みには、国内の閉塞したファッションシーンへの鬱憤さえ感じる。大浜氏にとって、国内で開催されるTGCは「ローカルTGC」なのかもしれない。

来春までには5万人規模でのイベントを海外で開催する新生TGC。大浜氏の舵取りに注目したい。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。