<不安を煽る朝日新聞>保育施設での死亡事故率「0.0007%」そんなに高いか?


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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5月1日の朝日新聞ネット記事『認可保育所、安心じゃない? 次々開設、各地で問題発覚』では、認可保育所で問題が起きていることを、次のような利用者のコメント付きで報じている。

 ・「毎日、無事に帰ってくるかどうか気が気でなかった。子どもも不安定になり、自分も精神的に追い詰められた」(保護者)
・「掃除が行き届かず、ぜんそくが悪化した」(保護者)
・「事故だけは起こしてはいけないと、ギリギリの対応をしてきた」(自治体担当者)
・「保育士の配置や面積などの基準をクリアしてさえいれば、認可せざるをえず、一度認可すると、取り消しは難しい。基準を厳しくしてしまうと参入のハードルがあがり、量を増やせなくなる」(自治体担当者)。
・「不安を感じつつ審査を通していることもある」(専門家)
・「以前は、認可の申請を出す前に自治体側が厳しく中身をチェックしていたが、最近は甘くなっている」(保育所経営者)

更にこの記事では、4月11日に衆議院議員会館(東京・永田町)で、母親たちが「安全な認可保育所を増やして」と厚生労働省の担当者に訴えている写真も掲載されている。

【参考】<潜在待機児童数171〜326万人>厚労省の試算5万人とはケタ違い?

それにしても、こんな記事見出しや記事内容では、子どもを預ける親たちの不安が徒らに煽られるだけではないかと思う。問題が発覚したことを報じるのは悪くないが、保育施設の利用者数に占める事故率くらいは試算しておくべきだ。

こうした「確率」は安心感に繋がる場合もあるので、以下では保育施設での死亡事故率について、私なりに試算しておきたい。

厚労省が2月3日に公表した『保育施設における事故報告集計』によると、2014年の報告件数は177件(認可保育所155件、認可外保育施設22件)で、この177件のうち2014年に発生した事故件数は118件。

死亡の報告は17件で0歳(8名)が最多、事故発生場所は園内(室内)(82名)が最多。この17件のうち、認可保育所は5件、認可外保育施設は12件。

厚労省によると、(1)認可保育所について、施設数24,425ヶ所(2014年4月1日現在)、利用児童数2,266,813人(同)、(2)認可外保育施設(事業所内保育施設を除く)について、施設数7,939ヶ所(2014年3月31日現在)、利用児童数203,197人(同)となっている。

死亡事故の報告件数に対する利用者数の割合は、2014年(年度)に係る報告件数ベースでの単純計算では、認可保育所で0.0002%、認可外保育施設で0.006%となり、全体では0.0007%となる。

この『0.0007%』を高いと感じるか、低いと感じるかは、人それぞれだろう。

参考までに、日本国内の交通事故死亡者は、警察庁によると、2014年で4113人。2014年10月1日時点の日本の総人口は1億2708万3千人なので、単純計算で交通事故死亡者の割合は0.003%となる。

保育事故と交通事故の単純比較には賛否両論あるだろうが、身近にあるリスクという点で、一つの比較指標にはなるかもしれない。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。