<客いじりをしようというする心を必死で我慢する役者の強さ>「風のセールスマン」作・別役実/演出・出演・柄本明@世田谷パブリックシアター

保科省吾[コラムニスト]

 
客席は満員。客層は決して若いとはいえない。
美術も演出・出演の柄本明。下手にきっと上るだろうと思われる野太い電柱。上手にバス停と灰色のベンチ。こげ茶色の布に書かれたタイトルが舞台天井「から振り落としで出る。
雨も降らないのに黒いこうもり傘を差した灰色のくたびれた背広の柄本明、歌いながら登場。『秋の青空 赤とんぼ』この歌詞が劇の通奏低音ではないかと感じさせる。柄本は靴の中敷の水虫防止シートを売るセールスマンである。寅さん風のトランクを持っている。
一人芝居は窮屈なもので、その窮屈さを逆手に取るのが劇作家と演出家の楽しみだとは思う。説明台詞をどれだけなくすことが出来るかだと僕は考えるが、少なくしすぎると今度は話が分からなくなる。
サラリーマンは自分が他人と違うことを認識している。笑い方、歩き方。しかし、僕にはそれを苦に思っているのか、楽しんでいるのか、読み取れない。
それにしても、役者は強い。芸人なら板に乗ったら笑いをとらずに降りてなるものかと思うだろうが、役者はそうではない。
何度も、何度も、客いじりをしようというする心を必死で我慢しているように見えた。
 
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