<EU離脱は英国「終わりの始まり>スコットランドと北アイルランドも独立の気運


茂木健一郎[脳科学者]

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EU離脱についての英国の国民投票の結果は、衝撃であった。結果を受けて、キャメロン首相が辞意を表明し、政界が離脱に向けて動いていること、スコットランドや北アイルランドが独立の動きを見せていることなど、予断を許さない流れになっている。

EU離脱の結果を招いたのは、やはり移民問題であろう。欧州統合の理想が、域内、そして中東などの域外などからの移民圧力を前に崩壊しようとしている。英国だけの問題ではなく、欧州統合のプログラム自体が頓挫しかねない。

EU離脱の結論となった国民投票の割合は、LEAVE(離脱)が51.9%、REMAIN(残留)が48.1%であった。この結果を「LEAVEが勝った」というのは数学的問題であるが、心理的には、納得への道、そして実行へのプロセスは簡単ではない。

【参考】<日本は大丈夫か?>英国のEU離脱論議に見る民主主義の原則[茂木健一郎]

何よりも当惑するのは、今回の、国民投票から離脱への動きが、英国の最良の伝統と齟齬を起こしていることだろう。英国は、国民投票のようなむき出しの多数決でものごとを決める、というやり方とは違う何かで、国を動かしてきたように感じる。

宝くじなどの収益をどのようなものに使うか、BBCの番組の構成をどうするか、どのような教育システムにするか。いくつかの重要な政策において、英国は、単なる多数とは異なる「基準」にもとづいて、行動してきたように感じる。

おそらく、英国として「賢い」選択は、未だに、EU内にとどまり、移民問題などの解決に知恵を絞ることだろう。国民投票の結果が出た後でも、disbelief(信じられない)の感覚が残るのは、これまでの英国のやり方との差異ゆえだと感じる。

ストリートに作品をつくることで知られる匿名のアーティスト、バンクシーが「英国の人々は離脱の投票をした後で、EUってなんだったっけとグーグルで慌てて調べている」というツイートを引用して、「これが人間っていうものさ」とツイートしていた。離脱の投票結果には、そのような違和感が残る。

英国は、本当に、EU離脱に向かうのか。その結果、スコットランドと北アイルランドも独立して、連合王国はバラバラになってしまうのか。一夜明けた今日は、まだ、disbeliefの感覚の方が強く、これからの道筋は、霧の中のように感じる。

EU離脱は、英国の終わりの始まりなのだろうか。今までの英国の伝統が、根底から覆されようとしているように感じる。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。