バラエティ番組はゴールデンタイムに放送するからツマラない?


高橋維新[弁護士/コラムニスト]

***

近年、笑いの番組が「おもしろくなくなった」理由は、敢えてレトリカルに言えば、「おもしろくなった」からであろう。

「笑いの番組」とは、いわゆる「バラエティ」の範疇に属するのだろうが、かつてのバラエティはその名が示す通り「その他大勢」の扱いだった。ニュースやドラマやドキュメンタリーと比べれば、その地位は低かったと、昭和のテレビマンたちは言う。

だからこそ、好き勝手に色々できた面があり、お笑い番組はどんどんおもしろくなっていった。その結果、視聴者たちは、テレビの中に「何やらおもしろいことをやっている番組がある」ということをどんどん発見していき、バラエティは人気を得、テレビ中心へと駆け上がっていった。もちろん、その人気にあわせてその地位も上がっていったはずだ。

深夜の30分の枠でひっそりとやっていた番組が、いつしか1時間になり、ゴールデンの時間帯へと進出してゆくことで、更に多くの人が見るようになった。

一方で、ゴールデン進出は喜ばしいことばかりではない。多くの人に見られる、ということは不可避的に「見たくない人の目にも入ったしまう」ことになるからだ。バラエティ番組を楽しむ感覚とは無縁の人たちに視聴されることで、クレームは増える。例えば、食べ物が粗末に扱えなくなったり、過激な下ネタや悪口もできなくなってしまう。当然、スポンサーからの横槍も多くなる。

ゴールデンである以上、高い視聴率をとり続けなければならないというプレッシャーも増える。安易に視聴率をとろうとするために、一回当たった企画があれば、そればっかりやるようになる。そのようなことの積み重ねの結果、深夜にひっそりとやっていた頃のバラエティがもっていたような過激さや、自由な番組作りがしにくくなっていったのである。だから、バラエティはつまらなくなったのだ。

【参考】<成功しないテレビ番組の条件>芸能プロダクションの社長が決定権を持っている番組が最悪?

昔から、深夜でやっていた番組がゴールデンに進出すると、途端におもしろくなくなるというのはよく知られている現象である。

「はねるのトびら」(フジテレビ)も、ゴールデンに進出した結果、「めちゃイケ」よりも早く終わってしまった。「ガキの使い」(日本テレビ)や「アメトーーク」(テレビ朝日)などは、ゴールデン進出によるしがらみの増加を避けるためにずっと深めの枠でやっている番組だろう。

今や、ゴールデンでやっているバラエティに、力のあるお笑い番組はほとんどないといってもいい。

ゴールデンのバラエティは、動物のカワイさを前面に押し出した番組とか、外国人に日本のことを褒めさせて日本人の視聴者をいい気持ちにさせる番組とか、そういう「笑い」以外の種類のエンターテインメントに特化したものばかりだ。

「めちゃイケ」は、ただ一つゴールデンで奮闘していた(=普通に深夜レベルの下ネタをやっていた)印象があるが、どんどんそのパワーも減退しているように思う。

下ネタや悪口の過激さでは、CSやインターネットには勝てない。CSやネット番組では、突飛なアイディアでも、どんどん形にすることができるメディアとしての「若さ」がある。しかし、ゴールデンのバラエティには、そういった「若さ」がない。

【参考】<ネットニュースの弱点>「既存メディアの追従」と「見出し以上の中身がない」

この問題の解決法は意外と簡単であるように思う。例えば、まずはゴールデンの放送をやめて、かつてのように深夜放送に戻ってみてはどうだろうか。深夜でも無理なら、CSやインターネットでやればよい。見たくもないのにたまたま目にして、文句ばかり言ってくるゴールデンの放送とは視聴者の層が自ずと異なる。

ようは「見たい人しか見られないようなところ」で放送すればよいのである。

パイは小さくなるが、それでも面白いものさえ作れていれば、表舞台に出るチャンスはいくらでもある。それはこれまでインターネットから様々なヒットコンテンツや有名人が生まれていることからも明らかだ。

インターネットが普及した結果、口コミはいまや爆発的な速さで広がるようになっている。深夜やCSやネットへの移行は、決して「逃げ」でも「撤退」でもない。ましてや「降格」ではない。そもそも「ゴールデンこそがテレビ番組(=映像番組)の一番偉い形」という価値観がおかしいのだ。

現代においては、個人の趣味嗜好は非常に多様化している。今日コンテンツビジネスは、「各人の好みに合わせたものを作って、それを好きな人にだけ届ける」という段階に達している。Amazonは、品揃えを膨大にして、各人が自分の好みの物を好き勝手に注文できる仕組みだからこそ、あそこまで人口に膾炙したのだ。

お笑い番組は、好きな人も嫌いな人もいる。まずは好きな人が好きなように見られる仕組みを確立し、足元を固めた方が良いのではないか。手始めに深夜やCSへの移行である。録画機器も発達しているのだから、好きな人は変な時間帯や変なチャンネルでも見てくれるはずである。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。