<最後のテレビ③>「死ぬ間際に見ていたいテレビ」を問われたら、笑いを主戦場としている放送作家としてどう答えるか?


高橋秀樹[放送作家]

○年後、私は一人暮らしの寝たきり老人である。

訪問介護のおばちゃんが尋ねてくる。おばちゃんは言う。

おばちゃん「このごろ、お医者さんも高くなってねえ、医療費は8割負担だから、めったに行けないよねえ。自分で治すってのが流行らしいよ」

高橋秀樹「おばちゃん、テレビつけてくれるかい」

おばちゃん「ろくなのやってないよ」

高橋秀樹「いつも見てるやつがあるんだよ『健康 DO IT YOURSELF』」

女性キャスターがしゃべりはじめる。「皆さんこんにちは。きょうは、自分で打てる痛くない点滴の打ち方です」

高橋秀樹「これ、これ。介護負担も6割だからねえ。来週から自分で……」

おばちゃん「私はお払い箱かあ。じゃあ、きょうくらいは私が痛くないようにやったげるよ」

高橋秀樹「うん。痛くない。痛くないついでに頼みがあるんだけどなあ、おばちゃん」

おばちゃん「なんだい?」

高橋秀樹「その、今入れてる点滴ねえ。それにウイスキー足してくれないか」

なんだか少し眠ったようだ。

『健康DO IT YOURSELF』の女性キャスターがすこし厳しい顔をして話している。

「決して、点滴にお酒を混ぜたりしないでくださいね。さて来週は、自分でできる大腸ポリープの取り方です。お楽しみに」

 

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