フジテレビ「とくダネ!」の小倉智昭さん、菊川怜さん、梅津弥英子さん、笠井信輔さんの絶妙パワーバランス
藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター]
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テレビ屋はほんとうに会議が好きです。あまりに会議をするので、話が行ったり来たりしているうちに、誰ひとり思いもよらなかった結論で決着することさえあります。多くの場合その結論は誰にとっても妙だったりして。
テレビ番組もいろいろな力関係が働きます。営業&スポンサー&代理店、編成、主な出演者&事務所、有力構成作家、お偉いプロデューサーなどなど、“力”を数えだしたらきりがありません。その複雑な力関係に対して、あちらを立て、こちらも立て、ついでにそちらも立て、とやっていると番組はどこか妙なところへ着地したりします。
フジテレビの『とくダネ!』がそうだというのではけっしてありません。私は事実を知りませんから。でも番組の総合演出みたいなことを長年やってきた私にそんな想像をさせるのが昨今の『とくダネ!』です。
ワイドショーの出演者は男女ペアのMCにリポーターとコメンテイターというかたちが多いようです。
『とくダネ!』ですが、公式HPによれば、MCには小倉智昭さん菊川怜さんのお二人に加え梅津弥英子さんという方がおられて“サブMC”とされております。
“サブMC”とは聞き慣れない言葉ですが、そこまでして梅津さんを配置する意図はなんですかねえ?番組を視ているかぎりでは良くわかりません。一部では小倉さんと菊川さんの間が・・・なんて噂もあるようですが・・・まさかねえ。
ベテランアナの笠井信輔さんもMCです。しかし笠井さんは情報をプレゼンするリポーター側の特別席?にいて、情報を補足したりしていて “リポーター頭”みたいな印象です。スタジオのフルショットでは、正面のコメンテイター陣をはさんで上手にMC二人+サブMC、長いカウンターから外れた下手端に別の机を前にした笠井さんが・・・。いささかビミョーなヒキの画ですが、でも笠井さんは4人目のMCです。
この番組の正式タイトルは『情報プレゼンター とくダネ!』とありますから情報を視聴者にプレゼンする番組のようです。
ならばキホンはリポーター陣が情報をプレゼンし、コメンテイターがそれにコメントするのかと思えば、必ずしもそうでもなくて、番組冒頭に“小倉が斬るニュース”コーナーがあり、これはMCの小倉さんがプレゼンターのようです。以前の『とくダネ!』には小倉さんのひとりしゃべりの長いオープニングトークがあったのですがこれはその代わりなんですかね。
ある日のこのコーナーでは、まずMCの小倉さんがネタを視聴者にプレゼン、それを受けて局アナがさらに詳しくプレゼン、さらにさらに笠井さんが補足のプレゼン、と同じネタをなぜか3人がかりでプレゼンしていました。小倉さんの目線はカメラ(視聴者)、局アナ二人の目線は小倉さんです。
『とくダネ!』ではコメンテイターもプレゼンターになります。アメリカのゴシップネタのコーナーはコメンテイターであるデーブ・スペクターさんがプレゼンしています。
私はA型人間で、ザックリとでも各々の役割を決めてスッキリと視聴者に視て欲しいタイプの制作者なのですが、『とくダネ!』のみなさんはなにかと自由奔放です。
『とくダネ!』を視ていて、テレビ草創期から活躍された大御所構成作家である羽柴秀彦さんのお言葉を思い出しました。『テレビなんてさ、おもしろけりゃ、誰がなにやってもいいんだよ』 そりゃそうですね、『とくダネ!』のみなさん、ガンバッテください。(藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター])
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