<キム兄とスタッフは分かっている>近年まれに見るNHK「チコちゃんに叱られる!」
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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9月21日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」で、チコちゃんの中の人(キム兄)が決まりゼリフの「ボーっと生きてんじゃねえよ!」を、言った後、パネリストの岡村隆史、キムラ緑子、中村倫也から拍手が湧いた。
そのとき、キム兄はすかさず「拍手が来るようになったら気をつけなくちゃあなんないんだよなあ」と本音を漏らした。キム兄=木村祐一は、優れている。分かっている。
本来は決め言葉「ボーっと生きてんじゃねえよ!」のあとにきて欲しいのは拍手ではなく「笑い」である。それが「笑い」ではなく拍手になったということは、決め言葉は逆の言葉ではなく、お待ちかねの言葉になったと言うことだ。それはつまり飽きられ始めていることだと考えるのが笑いをやっている人である。バラエティを分かっている人だ。
【参考】NHK『チコちゃんに叱られる!』ネタ選びミスは番組生命を縮める
さらに、キム兄の「拍手が来るようになったら気をつけなくなくちゃあなんないんだよなあ」のセリフは編集でカットされずに使われていた。それは、このキム兄のメッセージは大切だよと全スタッフに伝えてることになる。
さて、このメッセージを理解できるスタッフが30%ぐらいはいるのではないか・・・と思わせるところが「チコちゃんに叱られる!」の番組制作の仕組みが優れていると思えるところである。
スタッフは様式になりつつある番組をどうやって長持ちさせるか、おもしろいまま維持できるか。その工夫が出来るスタッフだと感じられるのである。
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