<日本だけのガラパゴス仕様>iPhoneのシャッター音はなぜ消せない?


茂木健一郎[脳科学者]

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iPhoneのシャッター音が消せない問題。一体どれくらいの方が、日本だけの仕様だと気づいているのだろう。10%? 20%? いずれにせよ、ガラパゴスな仕様である。それでみんなが疑問に思っていないことが、逆に大きな疑問の対象である。

iOS 10になって、シャッター音を消せるハックが流通した。私はさっそく実行しているが、画面に、常に丸い玉のようなものが表示されてうっとおしい。しかし、シャッター音がしないのは実に快適なので、そのままにしている。

しかし、噂によれば、このシャッター音を消すハックは一種の「バグ」であり、いつ修正されてしまうかわからないらしい。うっとおしい話である。シャッター音をなくすためだけにでも、海外でシムフリーのiPhoneを買おうかと思うくらいだ。

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日本市場で売られているiPhoneのシャッター音がなぜ消せない仕様になっているのかについては、公式な発表はないらしいが、巷では、「盗撮」を防止するためだと言われている。これが私にとっては信じられない理屈で、シャッター音そのものよりも、そのような「世論」がうっとおしい。

今仮に、盗撮をする不届きな輩がいるとして、そのような行為を「防止」するために、シャッター音を強制すべきだというには、いったいどのような理屈だろうか。そのようなロジックが正しいと信じている人たちは、私には信じられないし、そのような社会も、信じられない。

盗撮をする不届きな輩は、iPhoneじゃなくても、なにか他の方法でするだろうし、そもそも、強制シャッター音自体が一種の「騒音」であり「迷惑」である。中島義道さん(哲学者)の言われる、騒音に寛容な日本社会のメンタリティが関係しているのかもしれないが、いずれにせよ、シャッター全体主義は不快だ。

iPhoneのシャッター音がなぜ消せないのか、それを、日本の「世論」とやらがなぜ受け入れているのか、私にはこの世の七不思議である。ちなみに、私の周囲の友人たちの中に、強制シャッター音が必要だと考える人は一人もいない。日本の「世論」とやらは、一体どこにあるのだろう。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。