反グローバリズムがトランプ新大統領を誕生させた[植草一秀]


植草一秀[経済評論家]

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米国大統領選でトランプ候補が勝利した。

筆者のブログ、メルマガでは、9月28日付記事、「ヒラリーが大統領に就任できない可能性」「日本に良いのはトランプそれともクリントン?」にトランプが大統領に選出される可能性が低くないことを次のように記述した。

「トランプ氏選出の可能性は依然として低くないと見ておくべきだろう。」

「英国では主権者がEU離脱を決めた。これもグローバリズムに対する明確な反旗であった。巨大資本はうろたえたが、英国民は英断を下した。米国民もハゲタカ強欲資本が推進するグローバリズムに反旗を翻す可能性がある。それは、世界の新しい時代幕開けの宣言を意味することになる。」

と記述した。米国を支配する巨大資本は、死に物狂いでクリントン当選を誘導したが、主権者はこうした巨大資本の誘導に抗(あらが)った。主権者の勝利、レジスタンスの勝利である。

この選挙に際して、一貫してトランプ氏の当選見通しを提示し続けた副島隆彦氏の見事な洞察力が改めて輝きを放つ。今回大統領選の最大の特徴は、マスメディアがクリントンへの投票誘導を全面的に展開したことである。そして、もう一つの特徴は米国の主権者がこのメディア誘導を跳ねつけたことにある。

2016年の3つの政治ミステリーがあった。

第一は、英国のEU離脱国民投票判断に対してメディアがヒステリックな猛攻撃を展開したこと。

第二は、国益を損なうTPPに日本政府が異様な入れ込みようを示していること。

そして第三が、米国大統領選で共和党候補のトランプ氏に対してメディアがヒステリックな猛攻撃を展開したこと。

3つのミステリーの背景は共通している。

世界を支配する巨大資本=ハゲタカ=多国籍企業が、グローバリズムに対する民衆の抵抗に直面し、狼狽していることの反映なのである。英国民のEU離脱決定は、グローバリズムに対する英国民の抵抗を示す証左だった。

6月24日付の筆者のブログ記事「反グローバリズム起点になる英国民EU離脱決定」、メルマガ記事第1469号「英国EU離脱決定で安倍政権経済環境急変」に次のように記述した。

「英国のEU離脱は、『グローバリズムの退潮の始まり』を意味する。『グローバリズム』とは、強欲巨大資本が世界市場から収奪し尽くすためのスローガンである。『グローバリズム』によって利益を得るのは強欲巨大資本であって、市民は被害者になる。」

「英国のEU離脱は、多国籍企業=強欲巨大資本による政界制覇戦略に対する、主権者の反攻の開始を意味する極めて意義深い決定である。世界は大資本のために存在しているのではない。世界は、世界に生きる、それぞれの地域の、それぞれの人々のために存在する。それぞれの地域の人々が、それぞれの地域のことを、自分たちで決めようとするのは当然のことだ。多国籍企業が世界を支配する正当性など、どこにも存在しない。」

米大統領選の結果にもっとも強い衝撃を受けているのが安倍政権官邸である。安倍首相は150%のスタンスでクリントン支持を示してしまっている。

トランプ大統領誕生で安倍政権は行き詰まる。リスク管理の基本の基本を誤った結果である。

 

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。