<川内原発再稼働>鹿児島県・三反園知事の主権者裏切り – 植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する」

日本国憲法は、この書き出しで始まる。主権者は国民である。しかし、国民が直接、政治権力を行使するわけではない。

「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。」

国民が正当な選挙で代表者を選び、選ばれた代表者が、国民の厳粛な信託により、権力を行使する。代表者は、この基本を踏まえなければならない。国民に選ばれた代表者だからといって、好き放題、勝手し放題は許されないのである。とりわけ重要なことは、選挙に際しての公約である。

選挙で当選するとは、主権者である国民に公約を明示し、「その公約を必ず守る」という「契約」を交わすことと同義である。選出された代表者は、契約を履行する義務を負っていると認識する必要がある。

米国大統領選で新しい大統領に選出されたトランプ氏は、「トランプと米国有権者との契約」と題する文書を発表した。この文書にはトランプ氏のサインが記入されており、有権者のサイン欄に有権者がサインすることで契約書が完成される形態がとられている。

ビジネス界出身のトランプ氏ならではの流儀であると言えるが、選挙で選出される代表者は、「国民の厳粛な信託」によって政治権力を行使することになることを厳しく認識しなければならない。この点において、日本政治の現状はあまりにも悲惨である。

安倍自民党は2012年12月の総選挙で「TPP断固反対!」のポスターを貼り巡らせて選挙を戦った。それなのに、3ヵ月後にはTPP交渉への参加を決定。その後は、日本の国益を次から次へと放棄してTPPに突き進んだ。消費税増税については、「再延期はしない。そう断言します。」と明言しておきながら、再延期を表明。その理由として、「新たな判断」と言って開き直った。

沖縄では、翁長雄志氏が、「あらゆる手段を駆使して辺野古に基地を作らせない」と言いながら、「辺野古に基地を作らせない」ための手段を駆使せずに、辺野古米軍基地建設を事実上容認している。そしてまた、新しい公約破りの行動が表面化している。

本年7月10日に実施された鹿児島県知事選で新知事に選出された三反園訓氏が、定期検査で停止中の九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を事実上容認する行動を示している。この選挙では川内原発の再稼働問題が最大の焦点になった。

三反園氏は、川内原発の再稼働を推し進めた現職候補の伊藤祐一郎知事による県政を批判し、「原発のない社会を作ろう」「ドイツにならい、鹿児島を自然再生エネルギー県に」などの主張を掲げて、脱原発を訴える選挙戦を展開して、知事選に勝利した。

この三反園新知事が、11月28日、定期検査中の九電・川内原発1号機の運転再開を事実上容認した。「川内原発稼働阻止」という「県民の厳粛な信託」によって新知事に選出された三反園氏の鹿児島県民への裏切り行為であると言わざるを得ない、鹿児島県民は三反園氏の変節に対して、厳しい対応を示す必要がある。

主権者による「厳しい対応」とは、「不信任」であり、「リコール」である。安倍首相は、TPPを熱烈推進し、原発稼働を熱烈推進し、戦争への加担を熱烈推進している。そして、沖縄での米軍基地建設およびオスプレイ配備を熱烈推進している。

これらの行為が、「国民の厳粛な信託」に反するものであるなら、日本国民は、安倍政権に退場を命じる必要がある。安倍政権を退場させるには、次の衆議院総選挙で、安倍政権与党勢力を過半数割れに追い込むことが必要だ。そして、主権者の意思を反映する公約を明示する政治勢力に、過半数議席を付与する必要がある。これを確実に実現しなければならない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。