「嫉妬」は文明が発達する以前の時代の名残 – 茂木健一郎


茂木健一郎[脳科学者]

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人間、誰でも引け目や嫉妬のようなものがあって、他人の成功に対して、やっかみや妬みを感じることがある。そんな時には、次のように問題を整理することを推奨する。

まず、自分とは直接関係のないひとの成功だったら、素直に「すごいなあ」と思って、もし人生に必要ならば、インスパイアされ、影響されれば良い。そのひとの成功がなかったら、感じ得なかった新しい要素を、自分の人生に取り入れれば良い。

次に、自分に近いひと、例えば友人の成功ならば、やはり素直に喜べばいい。そして、こんなふうに問題を整理すればいい。

友人が成功してうらやましいと思っているかもしれないが、果たして、友人が成功するのと、失敗するのでは、どちらが自分の人生にとって良いかと。

【参考】不幸が重なっても「次もまた不幸」とは限らない

友人の人生がグダグダな場合と、成功している場合を比較すれば、明らかに後者の方が自分の人生が楽しくなることは間違いない。インスパイアされるし、何かごちそうしてくれるかもしれないし(笑)、人間関係やノウハウなど、新しいご縁をひっぱってきてくれるかもしれない。

友人と自分が共有している過去や、経験、趣味などがあったら、そんな共通の部分も、友人の成功にひょっとしたら寄与したのではないか、と考えると楽しい。自分もあやかる、というか「がんばろう」という気持ちになったらしめたものである。

そもそも、嫉妬というのは、配分される資源が有限で、それを他人が持っていると思うから起こるのである。もし、実際には資源は有限ではなく、ゼロサム・ゲームではなく、ウィン・ウィンだと考えれば、ものの見方は大きく変わってくる。

嫉妬は、文明が発達する以前の、資源が有限でしかなかった頃の感情的名残である。インターネットなどの革命によって、今や、世界の中に資源やニッチは無数にあり、誰かがなにかをとっても、自分は違うところにいけばいい。

世界はひとつではなく、他人の成功は、ひとつの世界をめぐる争いではなくて、未知の新世界に自分が向かうきっかけにすぎない、と考えれば、素直に喜べるし、そのように考えられるひとは、もっと伸びやかに呼吸できると思う。やったね!

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。