アメリカ人でも最強の社会的悪夢は「大勢の人の前で喋ること」


茂木健一郎[脳科学者]

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アメリカ人の最強の社会的悪夢は、大勢の人の前で喋ることだという。

アメリカでもそうなのか、と意外な気がするが、他人の目の前で話す、ということが緊張することであることは事実であろう。

話すことにせよ、書くことにせよ、アウトプットすることは緊張することも多い。そのため、無理に出そうとしてますますうまく行かないことも多い。そのような時には、一つ秘訣がある。それは「脱抑制」である。

アウトプットする時、たとえばそれが言語ならば、言葉をどう選択するか、配列して組み立てるかというプロセスの詳細は、無意識の中で起こるものであり、意識的にコントロールできない。コントロールしようとすると、かえってうまくいかなくなる。

【参考】男にはランチを2度食べなければならない時もある[茂木健一郎]

脱抑制をして、アウトプットにかかわる回路が自発的に勝手に動くことで、言語的表現が生まれるのである。つまり、話したり書いたりしながら、その内容は自分が意識的にコントロールするものではなく、勝手に出てくる、というイメージになる。

もちろん、意識は、ある程度の方向性をつくっているわけであるが(今書いているこの文章もそうである)、詳細については、無意識のプロセスに委ねる、という脱抑制のアプローチが、スムーズなアウトプットのためには欠かせない。

脱抑制によるアウトプットへのアプローチは、フロー状態を引き起こす。全く苦労することなく、すらすらと、流れるように言葉が出て来るという状態は、意識のコントロールなしでこそ生まれるのである。この感覚を身につけることが、生涯の宝物になる。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。