<創造性の条件>創造することは思い出すことに似ている – 茂木健一郎


茂木健一郎[脳科学者]

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創造することは思い出すことに似ている。

物理学者ロジャー・ペンローズは『皇帝の新しい心』の中でこう書いている。無から有は生まれない。側頭連合野に蓄積されたさまざまな経験、知識が結びつき、組み合わせを変えて出てくるのが創造であり、その意味では想起に似ている。

側頭連合野に蓄積された知識が元になるということは、経験の多い人は有利だということになる。しばしば、創造性は若い時に起こるという認識があるが、年を重ねた方が経験も増えるわけだから、創造性にとっては良いという見方もできる。

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一方、創造を引き出すためには、前頭葉から側頭連合野に「リクエスト」がいかなくてはならないから、その背景となる意欲が、若い時の方があるということもできる。つまり、年をとっても意欲がある人は、創造性の条件を満たしている。

知識や経験が蓄積することは創造性の条件だが、一方でそれにとらわれてしまうということもある。つまり、蓄積された知識・経験と、そこから「飛躍」した目標設定の両方がなければならない。常識をわきまえつつ、常識外れのことを構想しなければならないのである。

創造性は、ダブルバインドなプロセスだということもできる。一方では経験や知識という基盤があり、他方ではそれを無視した目標設定がある。この両者を補助線で結ぶのが創造性だと言ってもよい。

創造的になるためには、知識や経験を側頭連合野に蓄積し、一方で前頭葉で思い切り飛躍したターゲット設定を行えば良い。もっとも、ターゲット設定自体も本人の経験に基づいている限りにおいては「くりこみ」が生じている。ターゲットが外から来て、本人の限界を超える場合もあるだろう。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。