<糖尿病「教育入院」をしてみた>まずい食事でも糖尿病を改善しようとがんばる人は多いか?


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

***

筆者は今、糖尿病で教育入院をしている。教育入院とは、糖尿病を悪化させる自堕落な暮らしぶりを医師や看護師や栄養士の説諭によって改めさせようとする入院である。

糖尿病患者は予備軍を含めて約2050万人(厚生労働省・平成24年)と推計される日本で最もメジャーな病気のひとつである。糖尿病が怖いのは合併症で、網膜症(失明の可能性)、腎症(透析に至る可能性)、神経障害(壊疽による切断の可能性)で、この三者を糖尿病性三大合併症という。

ほかにも、糖尿病になると免疫力が低下してしまうので、肺炎や膀胱炎、腎盂炎、皮膚炎、歯肉炎、あるいは風邪といった、感染症にかかりやすいことが知られている。透析に至る可能性もあることから、心ないブロガーから「死ね」などとも言われる。

さて、教育入院だが多くの時間が食事療法の指導に当てられる。最近は糖質制限で糖尿病と闘うことを主張する医師もいるが、まだ、疫学的に証明されていないので、通常、日本の病院ではあらゆる栄養素を含む食品をカロリーを抑えてバランス良く食べようという指導がなされる。甘いお菓子、ジュース清涼飲料類、あらゆる酒を除けば食べていけないものはない。

カロリー制限は病状に応じて1200キロカロリー、1600キロカロリーなどの、段階があるが、誤解を恐れずにざっくり言えば、ふだん何気なく食べている量の半分以下と思えば良い。

と、いった次第であるから、教育入院の患者は「食べることしか楽しみがない」という事態に陥る。しかも、提供されるのは、カロリー制限で栄養バランス良くという条件を満たすために、大抵、味も素っ気もない食事になる。栄養士や調理師の苦労には思いをはせたうえであえて言うが、今回入院した病院は、これが恐ろしくまずい。蒸してぱさぱさになった鱈がうまいわけもない。

【参考】<時々のジャンクフードは「元気」の証し?>マックシェークを美味しいと感じた子どもの元気さ

それでも腹は異様に減るので3食とも待ち遠しくてしょうがない。だが、食堂に行って料理を見るとガックリうなだれざるを得ない。空腹は最高の調味料などと言うが、ウソだ、まずいものはまずい。いさんで食べに行くと、必ずまずい食事が出る。これが長く続くと何かに条件づけられてしまうのではないか。

年寄りになってから、大学院に入り、その修士課程で行動分析を学んだ筆者は以下のようなことを思う。

こういう嫌なこと(まずい食事)が提示されることを、行動分析では負の強化子、あるいは嫌子が提示されるという。A→B→Cの流れにするとこうなる。

A:カロリー制限で糖尿病を改善しようとする

B:出てくる食事がまずい

C:カロリー制限なんか止めようと思う

でもことはそう単純でない。「→C」の部分で、これで糖尿病がよくなるならやってみようと思う「正しき人」もいるからである。

【参考】「水素水ブーム」は楽して健康になりたいという需要?

「正しくない人」である筆者はこう思う。カロリー制限されて、教育入院で提供される食事がおいしかったならどうなるだろう。こういう好ましいこと(おいしい食事)が提示されることを、行動分析では正の強化子、あるいは好子が提示されるという。A→B→Cの流れにするとこうなる。

A:カロリー制限で糖尿病を改善しようとする

B:出てくる食事がうまい。

C:カロリー制限で糖尿病を治そう

このA→B→Cの流れはなんだかよくありませんか? ではカロリー制限の食事をおいしく作ることは出来るか。簡単に言ってしまうと「できる」。ただし、手間がかかる、人手がかかる、要するに金もかかる。

A:カロリー制限で糖尿病を改善しようとする

B:出てくる食事がうまい

C:カロリー制限で糖尿病を治そうと思うが、こりゃ大変だから無理かなあ

となってしまう。

筆者はいま大学院博士課程で医療コミュニケーションの研究をしているが、難病のインフォームドコンセントなどの、大変深刻なコミュニケーション以外にも、食事や生活習慣、医療・健康のコミュニケーションを成り立たせる分野は色々あるのではないかと思うのである。

そんな、健康な人に医療・健康情報を伝えるのに最も力を持っているのは、やはり、テレビメディアである。

 

【あわせて読みたい】