オリンピックのため「共謀罪創設」という本末転倒 – 植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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安倍首相は国会答弁で、今国会で審議される「共謀罪」創設(「テロ等準備罪」)について、

「(国際組織犯罪防止)条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」

と述べた。これが真実であるなら、東京オリンピック・パラリンピックの開催を返上すべきだろう。日本の諸制度、諸規制、法制度はオリンピック・パラリンピックのために存在するものでない。

諸制度・諸規制・法制度は国の根幹である。オリンピック・パラリンピックの開催が、その国家の根幹の諸制度・諸規制・法制度と対立するとき、対応の基本スタンスは二つに一つだ。

一つは、日本の諸制度・諸規制・法制度がオリンピック・パラリンピックと対立するから、法制度を変えてしまう。

いま一つは、オリンピック・パラリンピックが日本の諸制度・諸規制・法制度と対立するから、オリンピック・パラリンピックをあきらめる。

どちらが正しい対応なのか。

共謀罪は極めて危険な犯罪である。犯罪を実行していないのに、犯罪を考えただけで罪人にされる制度である。共謀の認定など、いい加減極まりないものである。

市民政治活動を展開されている斎藤まさし氏は、公職選挙法違反で逮捕、起訴され、一審で有罪判決を受けたが、完全な冤罪事案である。

疑いがかけられた行為について、チラシを配る際の文言について、当事者が斎藤氏と共謀していないことを法廷で証言した。

「共謀」は成り立ちようがないにもかかわらず、裁判所は「未必の故意による黙示的共謀」があったと認定した。

魔法のような言葉であるが、この言葉があれば、何も存在しなくても、

「共謀があった」

と認定してしまうことができることになる。こんな恐ろしい法律運用、裁判所判断が示されているのである。この状況下で「共謀罪」が創設されれば、権力は自由自在に市民を犯罪者に仕立て上げることができることになる。

安倍政権は昨年刑事訴訟法を改定した。正確に言えば「改悪」した。本来は、検察が密室で犯罪を実行しないように、警察、検察の行動を監視することが法改正の目的だった。

ところが、取り調べの完全・全面可視化などはまったく盛り込まず、司法取引や通信傍受などの権限だけが大拡大された。この「刑事訴訟法改悪」と「共謀罪創設」が組み合わせられると、政治権力は、権力に盾突く市民を片端から犯罪者に仕立て上げることができるようになる。

「刑事訴訟法改悪+共謀罪創設=新治安維持法」

になる。こんな危険な犯罪を創設するべきでない。共謀罪を創設しないとオリンピックを開けないなら、オリンピックを開かなければいいだけだ。

逆立ちした主張を控えるべきである。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。