<JASRACは必要か?>著作権料では若くて貧乏なクリエイターを豊かにできない

エンタメ・芸能

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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日本音楽著作権協会(JASRAC)は著作権の必要性について、次のような意見を掲げている。

*「著作物は自然に生まれるものではなく、作詞者や作曲者をはじめ、それぞれの著作者たちが労力をかけて創作するものです。著作者にとって、多くの人に自分の作品を楽しんでもらうことは喜びであり、新たな作品を創作する励みにもなります。同時に、創作した著作物が利用されるときに正当な対価を得られることも、創作に携わる人たちの創作活動や暮らしを支えるためにとても大切です。また、次の世代が創作を志すインセンティブともなります」

*「作品への対価が次の創作を支えていく循環を『創造のサイクル』と呼んでいます。著作権は、『創造のサイクル』を循環させ、新たな文化を生み出すために欠かせないものです」

「作品への対価が次の創作を支えていく循環を『創造のサイクル』」だと主張しているが、これはウソだ。ちょっと考えてみれば直ぐ分かるが、「次の創作」をすべき、若きクリエイターは著作権料をもらっていない。

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著作権料をもらえるほどの作品を作っていないから貧乏なのである。若いクリエイターにして見れば著作権ごと作品を定額10万円で買い上げてもらったほうが、よほど「次の創作」に臨む環境を整えてもらえるというものだ。少なくとも今日のメシは食える。

著作権が潤わせているのは既に肥え太った有名著作権者とあと、もうひとつあるがそれは本稿末に記す。

さて、著作権は若いクリエイターを潤わすわけではないという前提に立った上で、筆者はJASRACの方針に反対している。JASRACは音楽教室での演奏をめぐって著作権料を徴収する方針のことである。講師が見本として演奏する楽曲などが著作権料徴収の対象になるということだ。教室を運営する事業者などは「音楽教育を守る会」を結成し、直ちに反対の表明を発表した

筆者が音楽教室での著作権料徴収に反対の理由は「教育だから」といった理由ではない。前述したように著作権料が「次の創作」を支える糧にはなっていないからである。

JASRACが新たに音楽教室から著作権料を取る方針をすすめるのは、著作権料収入が年々落ち込んでいるからである。落ち込む理由はネットの登場で音楽が売れなくなってきたからである。ネット時代のビジネスモデルとしては、曲はネットで無料公開し、それを窓口にして、リアルのコンサートに来てもらい、入場料やグッズ販売で稼ぐモデルが普通になるだろう。

すると、JASRACの収入はますます細る。だからこその新著作権料徴収なのである。

さて、先ほどの答えだが、著作権で儲かるのは既に肥え太った有名著作権者ともうひとつ。それは、JASRAC自体である。つまり、既得権者ということだ。

 

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