<プロ不在の時代に思う>追悼「作曲家のプロ」船村徹さん

映画・舞台・音楽

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事/日本自閉症スペクトラム学会会員]

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「作曲家のプロ」ともいうべき船村徹さんが2月16日に亡くなった。 『矢切の渡し』などのヒット曲でも知られ、戦後歌謡曲を代表する作曲家として、作品は5000曲以上とも言われる名実ともに戦後日本を代表する作曲家の一人である。

船村さんは、過去のインタビューで、自身の「作曲」について次のように答えている。

「作曲は、日本語のすばらしさを助けるような脇役でありたい」

内弟子の鳥羽一郎には、次のようにもおっしゃっている。

「譜面通り歌わなくても、それが悪くなかったらいいよ、俺が譜面書き直せばいいんだから」

なかなか言えないセリフだと思う。船村徹さんは、紛う方なき大家である。また一方で作曲の職人でもあったことに驚嘆する。メロディが先にあってそこに詞を付けても、曲と詞が同時につくられても、いい曲はいい曲である。どちらかが良い悪いと言っているのではない。

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「たかが詞じゃないか」と言って、詞にメロディで挑みかかったのは桑田佳祐。

きゃりーぱみゅぱみゅの作詞作曲・中田ヤスタカはとてもじゃないがメロディと詞を同時につくっていかなければできあがらないだろう。

そこに見るのは職人としての仕事と矜恃である。それがプロというものではないかと、プロ不在の時代に思う。

 

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