<やっぱり面白くない?>芸人が書いたネタを役者が演じる「笑×演」


高橋維新[弁護士]

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2017331日放映の「笑×演」(テレビ朝日)という番組を見た。芸人が書いたネタを、役者にやってもらうというコンセプトの番組である。

今回は4組のユニットがネタを披露していたが、以下に芸人と役者の組み合わせをまとめておく。

(1)ハライチ岩井と迫田孝也・池田鉄洋

(2)さらば青春の光森田と前川泰之・木村了

(3)ナイツ塙と渡辺哲・不破万作

(4)ニッチェと西尾まり・松井玲奈

ナイツ塙が書いたネタ(3)のみ漫才だったが、他のユニットはコントだった。

実際に見た感想であるが、演者が役者なので演技力に難がある人はいなかったものの、基本的に台本から一歩も出ない形でネタは進行していた(もしかしたら台本通りじゃない展開はあったのかもしれないが、少なくとも筆者には全てのネタが台本ガッチガチで展開しているように見えた)。

アドリブのおもしろさは、なかった。アドリブを織り交ぜれば、1回ウケたくだりを台本から離れてしつこく繰り返すとか、ウケなかったところを切るとか、追いつめられた演者がテンパる様子を見せるとかいった形でもっと大きな笑いを生み出すことができるが、それがなかったのである。

役者という商売は、「読め」と言われたセリフを読み、「やれ」と言われた動きをやる仕事なので、彼らを非難することはできない。彼らは、プロの役者として、監督・脚本を務めた芸人の演出・台本の通りに芝居をやっただけである。

【参考】<テレビに力を>TBS芸人発掘番組『あらびき団』の復活を切望する

この当初の演出・脚本を超えて、アドリブで笑いをとっていける人を、「芸人」と言うのである。そういう意味では、今回のネタをやった演者はみな「芸人」ではなくて、「役者」だった。役者の強みは、当然演技力なのだが、本来芸人も演じる仕事であり、コントであっても漫才であっても「お芝居」をすることになるため、芸人に演技力が不要であるということはない。役者の演技力に頼るのではなくて、芸人が演技力を身に着けていくべきなのである。

そこに芸人にしかできないアドリブの展開を混ぜていってこそ、最高の笑いは生み出せるというもんだろう。監督役の芸人がもっとアドリブを混ぜろと指導・演出して役者たちを追い込んでいくということもやろうと思えばできただろうが、そこまでやる時間はとれなかったのだろう。

だから、今回の放映では特にいいものは見られなかった。純然たる役者がお笑いをやった場合の「台本ガチガチ」という問題点ばかりが目立った印象である。今後同じコンセプトで番組をやる場合、「役者」と呼ばれる肩書を持つ人の中にも、芸人のようなアドリブを余裕をもって織り交ぜていくことができる人がいるので、そういう人に台本を壊してもらうような展開を見てみたい。そうすれば、芸人も危機感を持って、自覚的に変わっていけるはずである。

以下に簡単に各ネタの寸評を記す。

(1)ハライチ岩井と迫田孝也・池田鉄洋

池田がツッコミ役(普段のハライチにおける澤部の役回り)だったが、いつもの澤部のように言葉を尽くして全部説明しながらツッコんでいたので、うるさかった。芸人は演技力がないのでツッコミを全部セリフにしてやらないと心配になるのだろうが、せっかくの役者なのでもっと言外の手段でツッコむというパターンを見せてほしかった。それはアクセントになるので客の飽きを防ぐことができる。

(2)さらば青春の光森田と前川泰之・木村了

ツッコミがうるさいというのは①と同じである。

(3)ナイツ塙と渡辺哲・不破万作

前半は最近の芸能人の名前がたくさん出てくるので、年配の二人にあまり合っていなかったと思う。ただ二人のパーソナリティにきちんと絡ませた台本作りはさすがである。

(4)ニッチェと西尾まり・松井玲奈

西尾が普段の江上の役回りだったが、ナチュラルなフラのある江上がやった方がおもしろいだろう。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。