<稲田失言問題>罷免すべき防衛相をかばう首相とメディアの反応

社会・メディア

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]
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<法に照らしても「防衛大臣失格」の重大発言>
弁護士出身とは思えない重大発言だ。6月27日夕に稲田朋美防衛相が東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛相、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と、自衛隊などを主語に同党候補への支持を呼びかけたのだ。
公務員は、公職選挙法で自らの地位を利用した選挙運動を禁じられており、防衛相も例外ではない。また、自衛隊法は、隊員の政治的行為を制限している。稲田氏は隊員に当たらないが、防衛相の指示で組織を挙げて特定候補を応援していると受け取られかねない。
単なる失言ではなく、法に照らしても完全に防衛相失格である。
<安倍首相の防衛相続投方針に在京紙の論調はいつもながら2分>
ところが、安倍晋三首相は、稲田氏がこの発言を撤回したことを理由に防衛相の続投を指示。菅義偉官房長官は6月28日の記者会見などで4野党の罷免要求をはねつけた。
これに対する主要メディアの報道はどうか。在京全国紙のうち朝日、毎日、東京は稲田氏の「違法」発言を厳しく追及する紙面を展開。朝日新聞は6月29日付社説で「首相は直ちに罷免せよ」と引導を渡した。
一方、読売と産経は当初、稲田氏の発言を2面で地味に扱うなど、安倍政権へのダメージが少ない紙面でお茶を濁していた。
<やっと読売も社説で「あまりに軽率で、不適切な発言」と批判>
しかし、さすがに稲田氏をかばいきれなくなったのか、読売も30日付でやっと社説で取り上げ、「あまりに軽率で、不適切な発言である。自衛隊の指揮官としての自覚を欠いている」と、批判した。ただ、読売や産経は、稲田氏の罷免は要求していない。
安倍政権や与党議員の不祥事が次から次へと噴出し、与党議員が都議選への影響を懸念するなど、第一次安倍内閣の末期と似た政治状況とも言われるが、安倍政権に対する論調が2グループに分かれる在京各紙の構図は基本的に変わっていない。
 
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