<脱原発は庶民の関心外?>メディアはまともな原発ゼロ化プロセスの報道を


石川和男[社会保障経済研究所・代表]

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経済産業省は、(1)原子力発電による電気(原発電気)は一番安く、(2)太陽光や風力のような再生可能エネルギーによる電気(再エネ電気)はかなり高い、と発表している。

これは「正しい」のか? ーー 結論から言うと、「今のところ正しい」。

東京新聞も、毎日新聞も、NHKも、朝日新聞も、テレビ朝日も、TBSも、絶対に認めないだろうが、こればかりは経産省が今のところ正しい。

経産省は、世界標準の計算方法で、しかも「脱原発」を目指した前民主党政権で用いられた計算方法で計算している。その結果、1kWh当たりの発電コストは次の通り。

<1kWh当たりの発電コスト>
原子力:10.1円〜
石炭:12.3円
天然ガス(LNG):13.7円
石油:30.6〜43.4円
水力:11.0円
地熱:16.9円
風力(陸上):21.6円
太陽光(メガソーラー):24.2円
太陽光(住宅):29.4円

原子力には、核燃料サイクルなど「再処理」、高レベル放射性廃棄物の「最終処分」、原発建設のための「立地交付金」、そして「事故リスク」対応費用も全て含まれている。それでも、最安値となる。

別の比べ方をする。再エネ電気と原発電気を敷地面積で比べてみる。

例えば、100万kW級の原発の敷地面積は約0.6km2で、1年分の原発電気の量と同じだけの再エネ電気を発電するには、(1)太陽光では約58km2(山手線とほぼ同じ面積)、(2)風力では約214km2(山手線の3倍以上の面積)の敷地が必要となる。

更に別の比べ方だが、化石燃料電気と原発電気を燃料の量で比べる。

例えば、100万kW級の原発1年分の電気を発電するのに必要な燃料(濃縮ウラン)は21トンで、同じ100万kW級の火力発電所1年分の電気を発電するのに必要な燃料は、(1)天然ガスでは95万トン、(2)石油では155万トン、(3)石炭では235万トンが必要となる。

こんなことばかり書くと、原子力がぶっち切りの一番だと思えてしまうが、そういうわけでもない。上記のような話は、日本のように、再エネ資源にも化石燃料資源にも恵まれていない国でのこと。水力や地熱、天然ガスや石炭が豊富にある国ならば、原発がなくても大丈夫。

【参考】<マスコミが報じない>福島原発事故「子どもへの被曝影響なし」

ところで、太陽光は原子力には勝てないのだろうか? ーー そんなことはない。勝つ方法はある。

そのためには、(1)欧州の約2倍もある太陽光発電システム費用を半減させ、(2)太陽光電気の法定買取価格を大幅減額させ、(3)天候・昼夜にかかわらず安定供給できるための蓄電池を備えればいい。(ただ、何十年後になるかは見当もつかないが・・・)

今回(2017年10月22日)の衆院選でも、前回の衆院選でも、前々回の衆院選でも、脱原発を公約の前面に押し出した政党は勝てなかった。希望の党も、立憲民主党も、共産党も、過半数には遠く及ばずに負けた。

脱原発を掲げたから負けたのではない。脱原発は、もはや選挙民の心を掴むようなものではないのだ。最大の関心事はやはり、景気・経済と高齢化・社会保障。

マスコミ各社は、敢えて原発推進論を掲げる必要はないが、いつまでも旧態依然とした脱原発論を叫び続けても、世間に通用しないのではないか。

朝日新聞や東京新聞が社説で叫んでいるような脱原発論は、もう使いものにならない。

<1>使い切るまで安い電気を作らせてから、安全に廃炉させる

<2>再エネ電気による安価安定供給が実現すれば、原発をなくす

という順を追ったまともな原発ゼロ化プロセスを掲げたらどうか。

極端な感情論や独善的な正義感を振りかざすような記事を書くのはもうおしまいにして、冷静な報道に徹していかないと、ネットの浸透で在京・中央マスコミはますます信頼を失っていくだろう。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。