[茂木健一郎]「You Ain't No Muslim, Bruv!(君のやっていることは、イスラム教徒の振る舞いじゃない!)」は心の叫び

社会・メディア

茂木健一郎[脳科学者]
***
先日、ロンドンの地下鉄で、複数の人が刃物で刺されて負傷するテロ事件があった。
犯人は、「This is for Syria」と叫んでいたとされる。それに対して、通行人の一人が、

「You Ain’t No Muslim, Bruv!」

と呼応したことが称賛されている。「You Ain’t No Muslim, Bruv! :君のやっていることは、イスラム教徒の振る舞いじゃない!」とでも訳せるこの言葉(中学などで翻訳の練習に使ってもいいかもしれない)、キャメロン首相を始めとして、多くの人が称賛した。
「You Ain’t No Muslim, Bruv! 」は、最近見られるイスラムを名乗るテロリストたちの行為が、宗教としてのイスラムを代表するものではないという本質を、簡潔に指摘している。テロを行う者の欺瞞を、的確に衝いているところが人々の心をつかんだ理由だろう。
さらに、この言葉が人々の琴線に触れたのは、あらかじめ準備された言葉ではなく、テロの現場という、緊迫した現場でとっさに出た言葉だったからであろう。とっさに出た言葉は、その人の心の中の真実を露わにする。
いわば、無意識からの手紙である。イデオロギーや価値観は、時に人の心を厚化粧にする。二重にも三重にも塗り固められ、真実の心の声が何なのか、本人にもわからなくなる。
そんな時代に、緊迫した状況での「心の叫び」にこめられた真実に、多くの人が救われた思いになったのだろう。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 
【あわせて読みたい】