NHK「ブラタモリ」林田理沙アナが、もっとみんなに受け入れられる方法


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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NHK『ブラタモリ』が面白い。なぜおもしろいのか2つの要素を挙げよう。ひとつは凡百の町歩き番組とは一線を画す「地形から考える」という、テレビでは誰も気づかなかった視点を導入しているからである。

もうひとつは「様式美」とでも呼ぶような番組のスタイルである。2018年4月21日(土)放送の「#101京都・銀閣寺編」を例に引いてこれを説明することを試みる。

この日から、ぶらぶら歩きのパートナーが交代した。大好評の近江友里恵アナウンサーが『あさイチ』に異動になったために、起用されたのは林田理沙アナウンサー。このタモリと林田アナと解説の専門家がいわゆる番組出演者の座組となる。座組は様式として最も目立つ特徴だ。

トリオ漫才でいえば、ツッコミとボケとニヤケの構造が安定していると言われる。ツッコミとボケは間違って使用されることが多いので他の言葉を当てておくと、ツッコミはフリ、ボケはコナシであり、そこに、ニヤケが加わる。

「京都・銀閣寺編」の『ブラタモリ』で言えば、京都高低差崖会の専門家がフリ、タモリがコナシ、林田アナがニヤケの役割となる。ニヤケの仕事はフリとコナシが展開する本線の話に隣のレールを併走しているぐらいの距離感で違和感を与えることである。そういう意味で今回の話の林田アナはニヤケの役割を果たしていたか・・・。実は知識があるのが徒になってしまっていた。

たとえば、銀閣寺の庭の向月台を見て「プリンにしか見えない」というのは、バカを装っているように見える。銀閣寺執事・久山哲永氏に「シンプルなものに美を見いだす日本の心をなんというか」と問われて、タモリより先に「わびさび」と言ってしまったが、これはいけない。タモリの発言(回答)を待つのがこの番組の様式美だからだ。

女子アナは助手に徹するべきだ、などという考えから言っているのではない。あくまでもブラタモリの座組の視点から言っているのである。

NHK内部のブラタモリ制作体制はどうなっているのだろう。おそらく何班かのチームがあって、最低3カ月は先行して、現地取材を行っているように思える。東京にも大阪にも独立した班があるかも知れない。

その班のなかで、筆者が冒頭に挙げた「地形」「様式美」に理解のない班があるような気がしてならない。これまでの放送では、吉祥寺の回の撮影をした班は分かっているが、宝塚の回を担当した班は分かっていないように感じられた。

【参考】<魅力半減>NHK「ブラタモリ」が財界に忖度?

もちろん今回の銀閣寺を担当した班も分かっていない。構成が逆である。銀閣から見ると京都御所への視線を遮る位置にある吉田山の地形を先にやってから、銀閣本体に行くべきである。そうすれば、いわゆる悪い素人である(自分から喋りたがる)銀閣寺執事・久山哲永氏の食い気味の発言も気にならなくなるだろう。

タモリ、林田アナ、専門家の3人が歩いているシーンにスタッフが写りすぎるのもダメ。院長回診や、そこのけそこのけの大名行列みたいで、感じが悪い。そうならないように撮影の工夫をすべきである。

岡本太郎やザブングルのワイプインサートもいらない。「ブラタモリ」の様式美に反しているからだ。

演出家は出演者に「〇〇をやって下さい」という指示は出すが「〇〇の立場でやって下さい」と、その立ち位置まで説明・指示できる人は少ない。本来、演出家の最も大事な仕事は後者なのであるが、林田アナはまだその指示を受けていないようである。それがあれば、林田アナは今後どんどん良くなるだろう。

 

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