<再雇用で時給874円?>人生100年時代に考えるべき「会社員の終活」

社会・メディア

知久哲也(放送作家)

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人生100年時代に突入したと言われ、日本人の2007年生まれ(現在10歳)の子供は、2人に一人は107歳まで生きるとも言われている。60歳定年を10年以内に迎える人たちからすれば、「それは今の若い人たちのことだろう」と思うかもしれない。しかし、それは決して未来の話ではないし、他人ことでは済まされない。

昨年ベストセラーになった『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン 、アンドリュー・スコット著)によれば。現在50歳(1967年生まれ)でも92~96歳まで生きるという。誰もがいまから考えなければならない大問題なのだ。

100歳近くまで生きるとすれば、仮に住宅ローンは完済していても、家のリフォーム費用も必要だし、医療・健康関連コストや晩婚化が進んでいつまでもスネをかじる息子・娘を抱えていたりと何かと生活費はかさむ。老後破綻せずにそれなりの後半人生を歩もうとすると、定年までに蓄えた資産で食いつなぐことは難しい。まじめに80歳まで現役で働かなければならなくなった。
この問題について詳しく解説をした人事コンサルタント・麻野進氏の新刊「幸せな定年を迎えるために50才からやっておくべき《会社員の終活》41のルール」(ぱる出版:https://goo.gl/34uFGq)が話題だ。

人生100年時代に、60歳・65歳でいったん強制終了する「サラリーマン人生第一期」をどう終えるか。と同時に「第二の(仕事)人生」をどうマネジメントすべきか。これが多くの働き盛りのサラリーマンにとって、先送りも逃げ切りもできない切実な問題であることの表れだろう。
話題の著書「幸せな定年を迎えるために50才からやっておくべき《会社員の終活》41のルール」の著者・麻野進氏に聞いた。

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【利き手:知久哲也(以下、知久)】国家公務員の定年65歳引き上げが決まるなど、「2回目の就職」は若い人たちも大きな関心を持っていますね。

【麻野進氏(以下、麻野)】これまで企業は、60歳超の再雇用社員を『働きたいなら、再雇用しますよ。賃金は安いけど』といわば福祉的な雇用をしていました。ところが、若年層の人手不足は今後も続くことは間違いなく、高齢社員も『積極的に貢献してもらおう』と定年前と同じ期待を寄せています。

【知久】確かに、定年後の再雇用といえば、福利厚生の厚い大企業が社員への福祉サービスとしてやっていたイメージがあります。中小企業には無関係な話ではないんですか?

【麻野】その通りです。中小企業においては人手だけでなく、管理職等の中核人材不足は深刻で、60歳を超えても「部長としてそのまま指揮を執ってくれないか」という状況になっています。専門的なスキルや知識のある人なら65歳どころか70歳を超えても経営者から「働く意思があるならいつまでも」と懇願されている場合さえあります。

【知久】なるほど・・・。

【麻野】むしろ大企業となると少々状況が違っているように思います。特にバブル期の社員は採用人数が多いこともあり、少なくとも管理職ポストは譲ってほしいのが本音でしょう。55歳までの間に役職定年となりマネジメント職の第一線から退き、一般社員として60歳定年を迎え、その後再雇用となりますが、役職離脱後モチベーションを落としたまま60歳を迎える人は悲惨な再雇用条件が待っています。

【知久】むしろ、大企業による福祉サービス的な再雇用の方が悲惨になる場合がある・・・と。

【麻野】役職をはずれて組織に貢献していない人は間違いなく、従来通りの福祉的雇用しか用意されません。しょうがないから雇うので、最悪、最低賃金の時給874円(全国加重平均額 10月以降適用)です。毎日やってもらうほどの仕事量が無いから、週3日でいいですか?(874円×8時間×20日=月給14万円)」という条件提示となっても不思議ではありません。

【知久】それは怖い話(笑)。完全に福利厚生、福祉サービスの一環ですね。

【麻野】サラリーマンは通常50歳当たりでほぼ、出世争いの決着がつき、第一次会社員時代は先が見えてしまいます。しかし、80歳まで働かざるを得ない時代に突入してるのに、50歳あたりから不良人材として周囲の迷惑になるような働き方では、60歳定年前に社会人としての使用期限が切れてしまい、もはや人手不足がいくら続いていても競争力はありません。働き方改革関連法でも「同一労働同一賃金」が進められるので、まだまだやれる・やる気のある高齢者が稼げる時代が到来していることを理解する必要があります。

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経済破綻が見える下流老人に向かうのか、カッコ良く稼いで人生を謳歌している上流老人になるのか、逃げ切れないバブル世代は、覚悟を持ってこれからのキャリアを考えなければならなくなった。

しかもこれが未来の話ではなく、ほとんどの働き盛りのサラリーマンに当てはまる話なのだ。「会社員の終活」と再デビューに向けた準備を、若い時から真剣に考える時代に来ているのだろう。

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