<激震北海道>電力復旧より総裁選優先の安倍首相 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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台風21号が東北地方、北海道を襲来したのが9月5日。その影響が残存するなかで、9月6日未明に震度7の大地震が発生した。千歳空港にも近い厚真町で震度7の揺れを観測した。北海道で震度7が観測されたのは史上初めてのことである。この地震ですでに7名の死亡が確認されており、他に2名の心肺停止者、31名の安否不明者が発生している。負傷者は道内で少なくとも300名が確認されている。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方、被災された方へのお見舞いを申し上げる。

行方不明者の一刻も早い救出・救援を行うための活動に政府は全力を挙げてもらいたい。地震の発生が午前3時8分で、地震発生後、昼間の時間帯を経過していたが、日没を迎えて夜の時間帯に移行した。地震の影響により、震源地に近い北海道厚真町にある「苫東厚真火力発電所」が緊急停止した。この緊急停止によって電力の発電量と使用量のバランスが大きく崩れ、他の道内の火力発電所がすべて運転を停止した。

北海道電力は6日午前6時から記者会見を行い、道内すべての火力発電所が運転を停止し、全域で電力の供給ができない状況になっていることを明らかにした。道内全域で295万戸が停電する事態に陥った。この事態に対応して、世耕経産相が午前8時すぎに経産省で記者に対し、「今回の地震による北海道内の停電について、数時間以内に復旧のめどを立てるよう北海道電力に指示した」ことを明らかにした。

ところが、その後、世耕経産相は正午前に、電力復旧の見通しについて大幅な軌道修正をした。

道内最大の火力発電所である苫東厚真火力発電所の復旧に、少なくとも1週間程度かかるとの見通しを明らかにし、他の発電所の再稼働などで9月7日までに一定の供給体制を取るものの、十分な電力の復旧には1週間以上かかるとした。苫東厚真火力発電所の1号機と2号機の発電施設に損傷が見つかり、4号機施設で火災があったことが影響したと述べた。

北海道内の水力発電所を稼働させたうえで火力発電所を順次再稼働させ、さらに本州から一定の融通を受けて、9月7日中には290万キロワットの供給体制を確立する方針が示された。しかし、9月5日のピーク時電力需要量が380万キロワットであったことから、需要量全体を賄える発電量を確保するには、少なくとも1週間程度かかるとの見通しを明らかにした。実際の復旧状況を見ると、9月6日午後3時までに一つの火力発電所が再稼働され、33万戸に対する電力供給が再開されただけである。再開されたのは、札幌市、旭川市、苫小牧市、室蘭市、安平町など37の自治体の一部地域である。

しかし、この時点では、依然として全道の260万戸は停電の状態に置かれており、この状況下で夜の時間帯に移行してしまった。電気だけでなく断水の被害が発生している箇所も多い。また、JRは北海道の全線で運転を休止している。新千歳空港も9月6日は閉鎖されて、全便が欠航した。市民に生活必需品を販売する小売店も停電の影響で機能がマヒしている。

病院では自家発電によって、必要最小限の電力需要を賄っているが、自家発電による電力確保には限界がある。北海道全体がきわめて厳しい状況に置かれている。とりわけ、電力の供給が再開されないと、各種の交通インフラの復旧も進まない。ガソリンスタンドにおけるガソリン販売も停電が解消しなければ行えない。きわめて深刻な事態が発生している。

自民党は総裁選などにエネルギーを投入するべき局面でない。関西地区でも台風21号による影響で停電が解消されていない地域が残されている。自民党は総裁選の告示を強行する姿勢を示しているが、そのような状況ではない。災害復旧の目途が立つまで、総裁選日程をいったん凍結するべきだ。自民党の良識が問われている。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。